2023年3月期決算企業の第1四半期業績発表が終わりました。その業績を受けて、足元の株式市場では、9月末の株主に割り当てられる「中間配当金」を受け取る権利を狙った売買がちらほら見られています。このよく話題に上る「権利取り」の売買は、単純に「高配当利回り株」を狙って買っておけばいいのでしょうか。

■ポイント.1 まずは、中間配当をしているかどうかを確認しよう

日本では、大半の企業が中間配当を実施しています。それら企業は、年間配当の約半分を9月末(中間決算)の株主に支払い、残り半分を3月末(期末決算)の株主に支払います。例えば、三菱UFJフィナンシャルグループは、中間配当で半分の16円を支払い、残りの16円を期末配当として支払う計画です。ちなみに、この中間配当を受け取るためには、9月28日(権利付最終日)までにその企業の株を買い、株主になっておかなくてはなりません。

権利付最終日とは、株主権利を得られる最終売買日であり、権利確定日(期末)を含む3営業日前を指します。もし、3月期決算企業の中間配当金を受け取りたいのなら、9月末(中間決算)の3営業日前、今年なら9月28日までにその株式を購入し、株主になる必要があります。

ただし、年間配当を2023年3月末の株主に一括で支払う企業もありますし、小売業などには2月決算の企業も多数あります。この2月決算企業の場合、中間決算は8月末であり、今期の中間配当を受け取る権利付き最終日は8月29日でした。

■ポイント.2 好業績の銘柄を選ぼう

注意したいのは、企業が発表している配当金額はあくまでも「計画」だということです。「計画」ですから、突然、変更される場合もあります。例えば、新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年、多くの日本企業が株主還元を抑制しました。日本経済新聞社が集計したところ、2021年3月期に減配や無配に転落した企業が全体の2割。これは、リーマン・ショック後の2010年3月期以来の高水準でした。新型コロナウイルスの影響で事業活動の不透明感が広がるなか、業績悪化を見込む企業が多く、増益などで配当余力のある企業でも手元資金を手厚くする動きが増えたからです。

今回の第1四半期決算でも、私が取材した企業の中には、利益が計画通りでもその半分以上が円安による「為替差益」だったり、資源高や輸送費などの「コスト増」で赤字に転落していたり、受注残が過去最高にまで積みあがっているのに「部品不足」で売上計上できなかったりと、昨今の特殊要因に影響を受けている企業が散見されます。

これでは、最悪の場合、配当が計画通りに支払われなかったり、株価が下がって配当金以上に損をしてしまったりする可能性もあります。そうならないためにも、発表されているうわべの数字だけで判断するのではなく、業績の背景や中身もしっかり確認することが必要です。

■ポイント.3 「高配当利回り株」も業績重視で

配当利回りは、購入した株価に対して、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示している数値です。計算式は、以下の通り。

配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価額×100

つまり、配当金額が同じで購入株価が高いと配当利回りは下がり、購入株価が低いと配当利回りは上がるのです。また、購入株価が同じで配当金額が大きいと配当利回りは上がり、配当金額が小さいと配当利回りは下がります。

注意してほしいのは、高配当株の中には業績が悪くて株価が下がった結果、高配当利回りになっている銘柄もあるということです。だからこそ、くどいようですが業績が重要。ちなみに、配当利回りの水準は時代によって違いがありますが、日本企業の平均は2%前後です。配当利回りが3%を超えていれば、十分、高配当利回り株だと考えていいでしょう。

■ポイント.4 長期投資は、「連続増配銘柄」にも注目

高配当利回り株でなくても、将来的に配当が増えそうな銘柄、もしくは、配当を長く続けていく銘柄に投資するという方法もあります。

企業は、1年で生み出した利益を原資として配当金を支払います。したがって、業績がよくなれば、当然、支払う配当金を増やすことが期待できます。これが「増配」です。

ちなみに、洗剤やシャンプーなどでおなじみの日用品メーカーである「花王」は、これまで32期連続で増配を行ってきました。日本のバブルが崩壊した時も、リーマン・ショックで世界が金融危機に陥った時も、ここまでの32年間、淡々と増配してきたのです。そして、原材料価格などの高騰で利益が圧迫されているこの2022年12月期も増配する計画であり、中期経営計画を見ると、2025年度までの36期連続増配が目標に掲げられています。

このような企業は、たとえ市場全体の株価が暴落したとしても、相対的に株価が下がりにくく、全体相場が戻りを試す場面では、いち早く買いが先行することもよく見受けられます。

もしあなたが長期的な投資対象を選ぶ条件に「配当」を考えているのであれば、こういった連続増配銘柄を候補にしてみるのもいいでしょう。ちなみに「花王」は12月期決算銘柄であるため、中間配当の権利取りはすでに6月で終わっていますので、ご注意を。

※本コラムでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。

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この記事を書いた人

内田まさみ

1998年にラジオNIKKEIへ入社。『経済情報ネットワーク』、『東京株式実況中継』等の株式情報番組を担当し、その後はフリーに転身。現在はラジオNIKKEIや日経CNBCの番組パーソナリティを務めるほか、ライターとして複数のメディアに記事を執筆するなど、多方面で活躍中。2017年11月には、初の著書となる『FX億トレ! 7人の勝ち組トレーダーが考え方と手法を大公開』を刊行した。

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