「日本だけで不動産を持つのはリスクであり、日本の不動産投資環境は海外から見れば特殊。原理原則をおさえれば、海外不動産投資でもしっかりと資産構築できる」と仰るのは、株式会社国際不動産エージェント・代表取締役社長の市川貴士氏。今回は前編に続き、40年以上にわたる不動産業界での経験から得られた不動産投資の原理原則と、海外不動産投資の注意点などについてお話を伺いました。

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インタビュイー:株式会社国際不動産エージェント 代表取締役社長 市川貴士氏

株式会社国際不動産エージェント公式サイト

https://ipag.jp/

インタビュアー:経営者のゴーストライター 中島宏明

今売れている海外の不動産

――今よく売れている不動産は、どの国・地域の物件が多いのでしょうか?

市川貴士氏(以下、市川氏): オーストラリアの不動産は売れています。資産価値という面もさることながら、日本との時差がほぼなく、行きやすいという理由もあると思います。移動時間が10時間以内だと「行きやすい」という心理になり、アメリカであれば西海岸は行きやすいので日本人投資家に人気です。時差は2時間までは比較的絶えやすいとされています。

また、寒い国・地域の人は温かいところの不動産を買う傾向があります。ある種の憧憬という面があるのかもしれません。

――確かに、常夏のリゾート地の不動産と極寒の地の不動産と言われると、圧倒的に前者の方が人気がありそうですね。私はインドネシアのバリ島に住んでいたことがありますが、リタイヤメントビザで滞在している人が「住むところは、年間の気温差が10度以内の方が身体に優しい」と話していました。年齢を重ねると余計にそう感じるそうです。

市川氏:地中海性気候のエリアが文明も栄えており、イギリスやドイツは文明がイタリアやギリシャなどに比べるとありません。だから一生懸命働くという面もあります。一見すると不動産と無関係な話をしていると思うかもしれませんが、不動産は管理をしっかりやってくれる人が現地にいないとダメです。そのため、真面目によく働いてくれるかどうかは不動産投資では重要なことです。

また、価値観が多様化しているとは言え、各国に人気不動産の傾向はあります。ヨーロッパが好きな人には歴史好きな人が多く、そういった投資家にはヨーロッパの古い物件が人気です。超富裕層の方であれば、「城を持ちたい」という人もいるかもしれません。また、日本の古民家が好きな人には、東洋文化や日本文化が好きなヨーロッパ人が多いです。

中国では、北京だと集合住宅ばかりです。高層ビルが憧れであり、成功の証なので人気になります。一方アメリカは、マンハッタンやシカゴは高層ビルが多いですが、基本はビーチ添いの戸建などが人気です。

私は地図や地球儀を見ているのが好きなのですが、地図や地球儀を見ていると地政学が感覚的にも視覚的にもわかってきます。「なぜその地域に人口が増えるのか」という視点を持ち、情報収集することは不動産投資に欠かせません。買うニーズがないと不動産価格は上がらないわけですから。

人口ボーナスで言えば、今後はアフリカの不動産が人気になる可能性があります。ただし技術革新・テクノロジーの課題がありますから、安直に「これからはアフリカ不動産だ」とは言えません。管理までしっかりできる人が現地にいるかどうかも重要になりますので、常に冷静な視点も持ち続けたいと思います。

海外不動産投資で騙される日本人投資家が多い理由

――現地の日本人が日本人投資家を騙すことも含め、海外不動産投資の失敗談はあとを絶ちませんが、なぜ騙される日本人投資家が多いのでしょうか?

市川氏:海外に関してあまりに知らないからだと思います。不動産のことに限らず、普通のことも知らない人が多いから騙されやすいのでしょう。特に、現地にいる日本人には訳アリな人もいて、悪徳ブローカーのような人も多い。ですが、相手が日本人というだけでガードが甘くなり、普通は信じないようなことも信じてしまいがちです。

ブローカー的な現地日本人のほとんどは、不動産業界の経験がない人です。海外に来て初めて不動産ビジネスをしています。その人自身も騙されているため、本人に騙しているという自覚がないケースもあります。そうなると、見極めるのはとても難しいわけです。

もっと日本人が海外に出て、異文化を身近にしていかないと難しいと思います。欧米コンプレックスがまだありますから、相手が欧米人というだけで信用してしまうこともあります。しかし東南アジアに行くと現地の人にマウントを取りがちで、海外では哀しい日本人をたくさん見ることになります。

また、海外の不動産事業者が国外に売りに来ている物件を買ってはダメです。良い物件は現地の投資家も買うわけですから、国外に売りに来ているということは売れ残りです。私たちは現地に行って情報を取っていますので、やはり足を使わないと良い情報に巡り合えない世界だと思います。

不動産投資の原理原則

――では最後に、不動産投資の原理原則や今後のビジョンについても教えてください。

市川氏:不動産はエントリーで決まる投資です。いくらで買うかによって、利回りも変わります。そのため、「相場が高いときには買わない」というのが原理原則です。市場心理や外部環境などに左右される金融商品ほど複雑ではないのですが、地場に強くないとダメです。地場に強い人とつながれるか次第だと思います。

私は不動産業界に40年いますので、原理原則を理解しています。原理原則をわかっていれば、大きな失敗をすることはありません。弊社が多数の国の不動産を取り扱うのは、「旬」が違うからです。選択肢が多いと、それだけリスクを軽減できるので、今後も取り扱う国・地域は増えていくでしょう。

私はバブルも経験しているのですが、良いときに売っても次になにかを買って損をするわけです。場所や都市を変えれば良かったのだと後で気づくのですが、当時はそれを知りませんでした。そういった失敗経験も積んでいますので、投資家のみなさんのお役に立てると思います。

近年は、世界の富裕層が東京の魅力を知り、東京の不動産の価値を認めてきています。世界の富裕層が価値を認めたということは、不動産価格が下がりにくいということです。東京が世界都市になったということでもあります。下がらないということは、長期的には上がるということです。一時的に下がったとしても、長期保有であれば問題ないでしょう。

今後は、物件情報をもっと公開していく予定です。アフターコロナで外国人の来日も増えていますから、ますます「国際不動産」として国内外の投資家に優良な物件情報を提供していきます。現地じゃないとアクセスできない情報にアクセスし続けることも、足を使って続けていきます。それらの物件情報をノンネームで開示し、会員サイトで詳細情報を開示することも検討しています。

アセットアロケーションから言えば、ペーパーアセットだけでなく不動産も。不動産の中でも、日本国内だけでなく海外もというように、ぜひ視野を広げていただければと思います。最近は、お子さんの留学のために現地の不動産も買うケースが増えています。4年間の家賃を払うより、価値が下がらないので買った方が良いという理由です。今後は、ますます海外不動産の相続の相談も増えていくと思います。「相続前の資産整理」や「海外不動産を買ったものの、現地の管理会社と連絡が取れないというトラブル」、「購入希望の海外不動産について、現地の人を信用して良いかわからない」といったご相談にも対応します。海外不動産はまだまだニッチな存在ですが、投資家のみなさんが安心して投資・運用できる環境をつくっていきたいと思います。

この記事を書いた人

WMJ編集部

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