「健康資産」や「健康経営」への関心が高まっていますが、経営者ご自身や従業員の方々の睡眠の質向上やストレス緩和のために具体的なアクションを起こせている方はまだまだ少ないでしょう。まずは、どんなことから始めれば良いのでしょうか。本稿では前編に引き続き、これまでに3000人以上の経営者の健康サポートを行い、累計180社・8万人以上の法人健康サポートの実績をお持ちであるLifree(ライフリー)株式会社・代表取締役のサトウ未来氏にお話を伺いました。

インタビュイー:Lifree株式会社 代表取締役 サトウ未来氏

Lifree株式会社 公式サイト

https://lifree.world/

インタビュアー:経営者のゴーストライター 中島宏明

睡眠の質を向上させるためには?

――睡眠の質を上げるためには運動も必要だと思いますが、どれくらいが適量なのでしょうか? やりすぎて身体が故障してしまうのも本末転倒ですよね…。

サトウ未来氏(以下、サトウ氏): 研究によると、1日4000歩を切るとメンタル不調が起こるとされています。10分で約1000歩とすると、1日に約40分歩けば達成できる数字です。睡眠の質を上げるのであれば、1日7000歩が良いとされています。

最近は、リモートワークの影響もあって1日ずっと座っているという方もいらっしゃいます。中には、「1日100歩」という人も。部屋とリビング、トイレなど家の中の移動だけだと、当然ですが身体の機能低下もあり、睡眠への影響だけではなくなってきます。

睡眠、運動とともに食事も健康のためには重要になりますが、「1日3食が理想」というのも人によって食事の回数が異なります。人間の身体は、飢餓状態にはある程度は耐えられるようになっていますが、満腹状態には慣れていません。人によっては「1日2食」「1日1.5食」など、人それぞれに合った設計をして最適化していきます。

例えば、「日中の眠気が嫌」という人には、ヨーグルトやナッツで補食することをオススメしています。良い油物はエネルギーとして持続するので、眠くならずに済みます。生活スタイルも人によって異なりますし、お客様がなにを求めているかによって最適な設計をするようにしています。

「寝る前の食事は良くない」とされ、寝る3時間前に食事を終えていることが理想とされていますが、会食があると難しいので経営者の方には現実的ではありません。また、アルコールの分解力も人によって差がありますので、「何杯くらいなら大丈夫か」は睡眠中のイビキ測定アプリなどを使って導き出していきます。

睡眠に関しても、「睡眠時間を伸ばす」というのは実は現実的ではありません。人によって理想的な睡眠時間は異なりますし、中にはショートスリーパーの方もいらっしゃいます。遺伝子として持っている人もいて、アスリートを含め100~200人以上をみると1人くらいはショートスリーパーの場合もあります。ショートスリーパーの方は、7時間も寝ると体調を崩してしまいます。

しかし、ショートスリーパーの方でも、睡眠の質を上げていくという考え方は同じです。睡眠の質を高めることを前提に、集中力や判断力、学習能力、創造性、仕事等への意欲、コミュニケーション力などが失われないようにサポートしています。駄眠(浅い眠り)ですとメリットを得られませんので、やはり質を上げていくことが重要です。

睡眠の質が上がると創造性・創作意欲が増す

――話が脱線してしまうかもしれませんが、睡眠と(創作)意欲には相関関係がありそうですね。私は学生時代、画家や小説家が身近にいたのですが、夜の睡眠時間は短い方が多かったものの、日中に目を瞑ったりして休息していました。また、黒い絵のシリーズで知られる画家のゴヤは、マンサナレス河畔の別荘で病魔と闘っていたのですが、ベッドから見える絵が気になって力を振り絞るように絵筆を取り「もう一筆だ」と加筆したと言います。1819年2月27日のことです。一筆だけだったはずが、やはり気に入らず二筆、三筆となって、やがて死の眠りではなく労働の後の疲れによる熟睡となり、少しずつ体力が回復して14点の絵を残すに至っています。良い睡眠を取ると生命力がみなぎり、創作意欲につながるのだと思います。経営者であれば、ビジネス意欲ですよね。

サトウ氏:日中に目を瞑って休息を取るのは、分割睡眠のひとつですね。マイクロ・ナップ と呼ばれており、30秒や60秒だけ目を瞑る仮眠です。日中にマイクロ・ナップでリカバリーするというのは、多忙な方には合っていると思います。起業家・経営者の方は、「気になることは今日やりたい」という方も多いですから、「睡眠が絶対」ということではなく、やりたいことをするための睡眠というスタンスが大切だと思います。そうでなければ、長続きしません。画家のゴヤの例は、良い睡眠が創造性や創作意欲、生きる意欲につながる良い事例ですね。

「健康経営優良法人認定」を目的にしてはいけない

――最近、健康経営優良法人やホワイト500の認定を受けたいという経営者の方も増えていますが、サトウさんはどう感じていらっしゃいますか?

サトウ氏:認定取得を目指す方の中には、投資家向け(株価対策)や求職者向けに会社を良く見せるためという方もいらっしゃいます。認定を受けることが目的になってしまうのは望ましいことではなく、もっと本質を考えないといけないと思っています。従業員の方々や経営者ご自身の健康状態が良くなり、結果として会社も業績も良くなり、「認定も受けられたね」というのが理想ではないでしょうか。手段と目的が逆転すると現場はしらけてしまいます。従業員目線では、「管理されているだけで嬉しくない」となると、エンゲージメントの低下や離職につながり逆効果になりかねません。

また、「会社での仮眠、お昼休みの仮眠を認めよう」という企業さまは増えているのですが、会社にその文化がないと導入は難しくなります。まずは、リーダーである経営者の方が理解する必要があります。そのため、私たちはリーダー教育の支援も行っています。

「健康経営」「健康資産」という言葉とともに、「Well-being(ウェルビーイング)」という言葉もよく聞かれるようになりました。健康は個人の問題だけではなく、環境や繋がり(ソーシャルキャピタル)によって健康度合いが変わり、環境が良いとそこにいる人々は健康になるという研究もあります。また、「どこに住むか」によって寿命も変わります。

私は、最初はパーソナルトレーナーからスタートしたのですが、健康への意識の高い一部の経営者さまにしかご利用いただけないことに気づきました。そもそも運動というのはハードルが高いですし、健康に対して意識しないといけない人が意識できてないという気づきもあって今の企業さま向けの事業を始めました。企業さま向けに健康サポートを行うことで、その会社で働く従業員の方々へも健康サポートをお届けすることができます。

――導入後は、どのようなステップで進んでいくのでしょうか?

サトウ氏:以下のステップで見える化し、改善・向上を図っていきます。

○ステップ1 サーベイ調査

現状の把握、見える化を行い、今後の改善対策をご提案

○ステップ2 Sleepセミナー

最新のエビデンスなど正しい知識を学び、楽しく簡単に行動の一歩を踏み出せるセミナーを実施

○ステップ3 Sleep resetプログラム

4週間で睡眠を中心に正しく学び、行動変容し、さらに睡眠の数値改善、ストレス数値の改善を実施

○ステップ4 Well-beingプログラム

8週間で睡眠・食事・運動のアプローチから24時間のセルフマネジメント力を向上

○ステップ5 リーダー教育

リーダー教育を行い、チームをWell-beingな組織へ

実際に導入していただいた企業さまの声は、こちらのページからもお読みいただけます。

導入の声

また、従業員さまの体調不良や離職に不安を抱える経営者さまや人事担当者さま向けに、「次世代型の健康対策3つのポイントWEBセミナー ~会社の人的リスクを最小限にする!~」も開催しています。ご興味のある方は、ぜひご参加いただければと思います。

この記事を書いた人

WMJ編集部

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