今年上半期は、世界各国の中央銀行が高インフレを背景に金融政策を変更。また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、政治的な混乱など、様々な要因が株式相場に影響を与えました。日本を含む多くの国・地域で進んだ、自国通貨安もそのひとつでしょう。
では、年後半はどうなるのでしょうか。見通しにくい相場を見定めるためのポイントを考えます。
■2022年前半の最大の注目ポイントは、FRBの金融政策だった
米国では、FRBがゼロ金利政策を3月に解除し、6月までにFF金利のターゲットを1.5%引き上げると同時に、量的緩和政策についても6月から保有資産の減額を開始しています。しかし、7月発表の消費者物価指数(CPI)が9%台に乗るなど、インフレがピークアウトする兆候は依然として見られていません。
ご存じの通り、今回の急激なインフレは世界で同時進行しています。しかし、米国とその他の国々では様子が違います。まず、多くの国で進んでいる「コストプッシュ型」インフレは、企業が、原材料価格高などによって増加した費用を、商品や製品の価格を上げて利益率を確保しようとすることで起こります。この「コストプッシュ型」だけでなく、「デマンドプル型」のインフレも同時発生しているのが米国です。
「デマンドプル型」インフレは、需要が過度に増えて起きるインフレのことで、今回の場合、コロナ禍においてFRBが過去最大規模の金融緩和政策を行ったことや、政府が度重なる給付金を支給した結果、住宅価格が高騰。また、お金を手にした人々は仕事に戻らず、人手不足からサービス価格も上昇しました。株式相場の下落の背景となったFRBの急激な金融引き締め政策は、自らも加担したことで起きたデマンドプル型インフレを抑えるためなのでしょう。
■2022年後半のFRBの金融政策を読み解くカギは、REIT指数?
そこで、今年後半の株式相場や景気後退の深度を測る上で見ておくべきは、やはりFRBによる金融政策です。デマンドプル型インフレが落ち着かなければ、FRBがその手を緩めることはできません。したがって、金利上昇によって影響がでる住宅販売件数や住宅在庫、住宅価格や家賃の動きを継続的に確認しておきましょう。さらに、REIT指数の動きも参考にしてください。よく、株式相場は景気動向に半年ほど先行して動き出すと言われますが、その株式相場より先に動き出すのが不動産で、REIT指数は、株式相場よりも2ヵ月~10カ月程度も先に動くようです。
ちなみに米国REIT指数は、昨年末に1950ポイント台という高値をつけた後、今年の6月には1500ポイントを割り込む水準まで下落し、現在は、戻りを試す展開。この戻りが続くようであれば、FRBは金融引き締めのペースを落とすことができないのか、もしくは、すでに金融引締めの先にある「金融緩和」をおり込み始めたのか―――。それを判断するにはもう少し時間がかかりそうですが、REIT指数の今後の動向もぜひ参考にしてみてください。
■日本経済のポイントは、為替相場と中国経済
日本経済のポイントは、まず為替です。年初、115円台だったドル円相場は、7月に139円台まで上昇しました。FRBをはじめとした各国の中央銀行が利上げに舵を切った一方、日本銀行は依然として緩和政策を維持していますから、これは致し方ないことです。
しかし、ある大手証券のエコノミストによりますと、2022年3月以降でかなり大口の円売りを出している存在がいるのだとか。その筋は、まだまだ多額の円建て資産を保有していると言い、どこまで売ってくるのかは見当もつかないのだろう。今年の後半も、円相場の動向から目を離せそうにありません。
そしてもうひとつ。日本経済から切り離せないのが中国です。中国は、未だにゼロコロナを諦めておらず、様々な製品の流通が滞る懸念がくすぶり続けています。また、日本で徐々に再開しているインバウンド需要が盛り上がるのか、盛り上がらないのかも中国次第です。
コロナ前の2019年、訪日外国人は過去最多の3188万人を記録しましたが、うち中国人の数も史上最多となる959万人でした。訪日外国人のうち、なんと3分の1が中国からの来日客だったのです。先日、世界経済フォーラムが発表した2021年版の旅行・観光開発ランキングで、日本が初めて世界一に選ばれました。加えて、円安も進行したことで、インバウンド需要に期待が高まっていますが、結局、中国次第というのが悩ましいところです。
その中国では、秋の共産党大会に向けて大規模な経済対策を打ち出すのではないかと見られていますが、今のところ、その見通しに沿うような動きは全くなく、逆に、地方経済の悪化や、一部の銀行からお金が引き出せないなど悪いニュースばかりが伝わってきています。もしそれが事実だとするならば、大規模な経済対策に期待するのではなく、中国が自国経済浮上のためにコロナに対する規制を緩和し、人やモノをどれだけ動かそうとするのか。その緩和策が打ち出される方に期待したほうがいいのかもしれません。中国のコロナ緩和策は、中国経済のみならず、日本の製造業、非製造業にとっても大きなポイントとなりそうです。
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