別稿「ウィズコロナの新時代に必要なシン・資産とは?」を寄稿していただいたアンティークコインギャラリア店主の渡辺孝祐氏は、10年以上前からアンティークコインの収集や取引の経験をお持ちです。本稿では、なぜアンティークコインに注目したのか? なぜアンティークコイン投資が富裕層から好まれるのか?などの質問に答えていただきました。

インタビュイー:アンティークコインギャラリア 店主 渡辺孝祐氏

アンティークコインギャラリア公式サイト

https://antique-coin-galleria.com/

インタビュアー:経営者のゴーストライター 中島宏明

なぜ富裕層にアンティークコインが選ばれているのか?

――本日はありがとうございます。まずは、なぜ富裕層にアンティークコインが投資先として選ばれているのか。なぜ市場が伸びているのか教えてください。

渡辺孝祐氏(以下、渡辺氏):需要と供給から言うと、アンティークコインは絶対に増えません。そのため希少性があり、需要が高まれば価値が上がることになります。金としての価値とアンティーク・美術品として価値のハイブリッドがアンティークコインの魅力で、インフレの影響もあって注目が集まっています。希少性のあるものは投資家も好みますので、シンプルなことですがそれが理由です。

また、コレクションコインの歴史は古く、200年以上の歴史あるオークションもあります。コインそのものは紀元前から存在しますし、ルネサンスの時代からコレクションアイテムとして、貴族の嗜みとして確立している世界です。「最近の流行り」ではなく、歴史と伝統があることも富裕層の方から好まれる理由だと思います。

――渡辺さんがアンティークコインに注目した理由は何だったのでしょうか?

渡辺氏:25、6歳のときに、副業で転売したことからスタートしました。7000円ほどで買ったコインが、1万5000円になった。そんな投資的な理由もありますが、コイン一枚一枚の背景にある歴史や文化、デザイン性などにも魅力を感じ、徐々に惹き込まれていきました。2015年に法人化し、今に至ります。

アンティークコイン投資のメリット・デメリット

――アンティークコインへの投資を検討されている読者の方もいらっしゃると思いますので、メリットとデメリットについても教えてください。

渡辺氏:まずアンティークコインを保有するメリットには、以下があります。

・絶対的な希少性(過去のコインは作れないため増えない)

・安定した価値(数百年続くコイン取引の歴史)

・匿名性(登録、登記、届出などが一切不要)

・為替リスクのヘッジ(販売時に自分の好きな通貨で販売できる)

・投資金額のレンジの広さ(数万円~億単位まで)

・持ち運びのしやすさ(ポケットに1億円の価値が入れられる)

・維持管理のコスパが最高(メンテナンス不要、固定資産税など毎年払う税金もない)

・短期的な価格変動を気にせずに済む(長期投資を前提に購入)

・生前贈与することで節税対策が可能(贈与時から値上がりした分がお得に)

さらに、今後の需要増もまだまだ期待できます。インドやベトナム、インドネシアなどの新興国の経済発展によって、新規コレクターが参入してきています。新しい富裕層は、由緒正しいコインを好む傾向があり、すでに高いコインの方が価格は上がりやすいです。貴族の嗜みという面もありましたが、近年はこれまでとは違った層の投資家たちが増えています。インターネットで情報がオープンになったこともあり、若年層の投資家も増えました。

現金化したいときはオークションに出品して販売することになりますが、落札されれば着金までは2週~1ヶ月ほどです。オークションによっては大きく価格が上がることもあり、それも楽しみのひとつだと思います。プロとコレクターが同じオークションで競ることになるのですが、オークションの様子もぜひ体験していただきたいですね。

――アンティークコインは、どのように保管するのが安全なのでしょうか?

渡辺氏:絵画や彫刻のように温度・湿度の管理は必要ありませんので、ご自宅でも良いと思います。もしくは、貸金庫で保管する方が安心かもしれません。お客様の中には、「500万円以上のコインは貸金庫に」など、ルールを決めている方もいらっしゃいます。

デメリットについてもお伝えしておきますと、

・保有するだけでは利息を産まない

・長期保有が前提となるため、余剰資金での取り組みが必要

・紛失や盗難などのリスクがある(貸金庫に預けるなどの対策が必要)

・短期売買には向かない(短期売買すると手数料負けしてしまう可能性)

・真贋のリスク(信頼できるディーラーから鑑定済みのコインを購入すること)

などがあります。最大のリスクは、真贋リスクだと思います。

真贋リスク対策とアンティークコインの選び方

――真贋リスクについては、どのように対策すれば良いのでしょうか?

渡辺氏:認定ディーラーなどの信頼あるディーラーから買うことが一番です。ネットオークションなどでも買うことができますが、かなりのリスクです。

当店は、世界の2大コイン鑑定機関である米国PCGS社と、NGC社の認定ディーラーになっています。PCGS社は、世界共通のグレーディング基準「シャルドン・スケール(70段階)」を最初に考案、確立した機関です。NGC社は、アメリカの国立博物館であるスミソニアン博物館所蔵コインをはじめ、数多くの貴重コレクションの鑑定を行ってきた機関です。

PCGSウェブサイト

NGCウェブサイト

また、「認定ディーラーから買ってもまだ不安が残る」という方もいらっしゃいます。相続などのためにご購入される方もいらっしゃいますから、長期保有が前提となるので当然のご不安だと思います。そのため、当店では「生涯の真贋保証」をしています。当店で購入いただいたコインは、すべて生涯の真贋保証サービスの対象となります。真贋について疑義が生じた場合には、当社が規定する第三者鑑定機関であるNGC社に再鑑定の手続きを取り、万一贋作だった場合は全額返金させていただきます。

――それは安心ですね。コインの選び方については、どのような観点で選ぶのが良いのでしょうか?

渡辺氏:価格上昇も楽しみのひとつではあるのですが、やはりコインに詰まった歴史・文化に触れていただき、「ピンときた」コインをご購入いただきたいですね。美術品としての側面もありますので、シンプルに「デザインが好き」という理由でも良いと思います。

アンティークコインは金貨がメジャーですが、銀貨や銅貨もあります。錆具合などの経年変化も楽しみのひとつで、同じ種類のコインでも状態によって価格が変わるので本当に深い世界だと思います。

――状態によっても価格が変わるというのは面白いですね。アンティークコインの最高価格はいくらくらいなのでしょうか?

渡辺氏:世界歴代最高落札額は、ダブルイーグル金貨の約20億円(2021年)です。次いで、フローイング・ヘア・ダラー銀貨(約12億円、2013年)、ダブルイーグル金貨(約6億円、2002年)です。ダブルイーグル金貨は民間で保有できるのは一枚だけですので、極めて希少性の高いコインです。

↓後編に続きます…↓

この記事を書いた人

WMJ編集部

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