◆22年の注目テーマ「メタバース」
Facebookが「Meta」に社名変更し、今後は「メタバース」を中核事業に置くと2021年10月28日(米国時間)に発表しました。メタバースとは「超(Meta)」と「宇宙(Universe)」を組み合わせた造語です。Facebookは「今後5年で『ソーシャルメディアの会社』から『メタバースの会社』へと移行していく」と発言し、この分野は1兆ドル(約110兆円)のビジネスチャンスがあることを背景に力を入れています。メタバースはまだ初期段階ですが、多くの重要な要素が形になり始めており、電子商取引からメディアやエンターテイメント、さらには不動産に至るまで、あらゆるものに革命をもたらしつつあります。今後、メタバース業界は年間収益1兆ドルを超える市場規模になる可能性があるため、現在の市場価値で15兆ドルを超えるWeb 2.0企業と競合する可能性があります。日本企業の動きとしては、「これから、メタバースに参入する」「NFTプラットフォームをスタートした」という報道に留まりますが、米国の動向を把握すると広がりを感じます。特に、超富裕層の皆様であれば、いつか仮想空間上の「不動産」を保有する・・・ことも近い将来あり得るかもしれないです。
◆Web3.0の世界では「遊んで稼ぐ」
Web上で、アートや音楽、ファッションなどをNFT (Non-Fungible Tokens)で所有する動きが出てきています。つまり、仮想空間上でモノを保有するときに、ブロックチェーン技術を基盤としたNFTは欠かせない存在です。これまでの「Web 2.0」の世界は、大企業が集中的に所有・管理する「中央集権体制」の世界です。例えば、ウェブ上でのゲームプレイヤーは、お金と時間を費やしてゲームで遊ぶものので、そこで行われた投資や努力は、現実世界では収益化できません。まさに「消費」をする対象です。しかし、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークの誕生によって「Web 3.0」の世界が支持を受け始めています。全世界のユーザーによって民主的に所有・管理する「非中央集権体制」の世界です。ユーザーは自分のデジタル資産をNFTとして所有し、例えば、ゲーム内で他の人と取引したり、他のデジタル体験に持ち込んだりすることができ、これを、現実世界で収益化できます。ゲームで稼いだ賞金を現実の世界で消費に使うことも可能になる考え方です。全く新しい自由市場を作り出すことができ、このような「クリエイター経済」の進化は、「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」として知られています。
◆米国では仮想空間上の不動産が売買
WSJの報道によれば、米国では仮想空間上の不動産が約4億8000万円で売却されるなど、すでに、仮想空間での街が出来上がり始めています。日本企業のメタバース関連の動きは、今のところ、アバターを使ったサービス展開や、NFTプラットフォームの構築に留まっています。やはり、一番大きなマーケットは、仮想空間上に街ができ、生活圏が出来上がることでしょう。仮想空間上の不動産や商業施設で誰もが買い物をできるようになり、仮想空間上の不動産にも家主や借主が存在し、賃貸料が発生する世界です。今はNFTも人気キャラクターやアイドルなどのファンコミュニティでの相性が良いですが、そのフェーズはアーリーアダプターの参加者に過ぎず、マス化しません。一般的な人が「こだわり」をそこまで持っているわけではないけれど、何となく仮想空間上で買い物を自然にするフェーズ入った時に、メタバースの世界は現在のWeb2.0の脅威になることでしょう。新しい産業が出てきた時に、資金のある人達はいつも根幹の部分を押さえにいきます。メタバースが一般化した頃に参入するのでは「機は熟しすぎている」――。ということに、今回もなるのでしょうか。
まだまだ、メタバースがどのような方向性に向かうのか、単なる一時的な「旬」で終わってしまうのか、見定めなければならないですが、超富裕層の視点からは、仮想空間上の不動産を先に押さえておくことも今後、視野に入れてみても良いかもしれません。
超富裕層の皆様は、このあたりまで俯瞰して資産を守る手段を考えるべきでしょう。