米証券取引委員会(SEC)は2024年1月10日、ビットコインの現物に連動する上場投資信託(ETF)11本を承認したと発表しました。ブラックロック(BLK.N)、アーク・インベストメンツ、21シェアーズ(ABTC.S)、フィデリティ、インベスコ(IVZ.N)などの申請を承認し、米国でビットコイン現物ETFが承認されるのは、今回が初めてのことです。また、2024年4月にはビットコインの半減期も控えており、暗号資産市場の盛り上がりが期待されています。幾度となく訪れる「クリプトの冬」を乗り越え、恒例イベント化した半減期が間近に迫った今、投資家はどのように暗号資産と向き合うべきなのでしょうか? 今回は前編に引き続き、2017年からマイニング事業を展開している株式会社ゼロフィールド 代表取締役 CEOの平嶋遥介氏に、お話を伺いました。
インタビュイー:株式会社ゼロフィールド 代表取締役 CEO 平嶋遥介氏
【平嶋遥介氏 プロフィール】
上智大学理工学部情報理工科、上智大学院理工学研究科卒業後、NTTデータに入社後、銀行向け勘定系共同センターへの機能追加・開発などを担当。2017年に株式会社ゼロフィールドを創業し、暗号資産関係のビジネスを展開。金融系システムやブロックチェーン関連の深い知識と豊富な経験を有しており、CTOとして開発チームを牽引しながらも、経営者として成長の道を歩む。2023年8月より代表取締役CEOに就任。
インタビュアー:ライター 中島宏明
事業ポートフォリオにマイニングを加えるのが当たり前に
――私は以前から「資産ポートフォリオに、ビットコインを代表とする暗号資産を加えるのがやがて当たり前になる」と言い続けているのですが、マイニングをweb3のインフラと捉えたとき、「事業ポートフォリオに、マイニングを加えるのが当たり前になる」のかもしれませんね。
平嶋遥介氏(以下、平嶋氏):そうなるように、ゼロフィールドとしては投資家様が安心してマイニング事業に参入できるよう環境を整えたいと思います。
マイニングを事業として行うには、マイニングマシンへの投資が必要です。マイニングマシンの投資は、データセンター投資や不動産投資に似ていると思います。データセンターは、インターネットのインフラとして欠かせないものです。同様にマイニングは、web3のインフラとして欠かせないものだからです。
投資家様の中には、「マイニングマシンはすぐに壊れる」という話を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。確かに、以前はすぐに壊れるものが多かったのです。しかし近年は、長期間稼働できるマイニングマシンがほとんどになりました。修繕についても、冷却ファンなどの消耗するパーツの故障がほとんどで、費用は安価です。また、消耗品以外の故障があっても、ゼロフィールドにはエンジニアが多数おり、安価に直すことが可能です。
また、マイニングする銘柄は選べるので、リスク寛容度に応じてマイニングする銘柄も選んだ方が良いでしょう。マイナーな銘柄をマイニングすると、暗号資産自体のボラティリティが高いので、リスクも高くなります。一方でビットコインのようなメジャーな銘柄をマイニングすると、ボラティリティは低いですが、競争も激しくなります。いろいろな種類のマイニングマシンでいろいろな銘柄を持つことで、分散投資が可能です。投資家様のニーズやリスク寛容度に応じた「暗号資産のポートフォリオ」を作ることができます。
マイニングを事業として行うには、日々の値動きに一喜一憂しないことが大切でしょう。マイニングの収益は、暗号資産の価格や取引量、難易度によって変動します。短期的には赤字になることもありますが、マイニングは暗号資産の存続のために必須なインフラであり、今年になってビットコインETFが承認され、金融商品としても認められるようになりました。今後更に暗号資産の活用が進み世界中でユースケースが増えていく中で、マイニングのニーズが増えていくのは確実だと考えています。
アメリカのマイニング上場企業とも対等に戦える企業を目指す
――昨年2023年にトリプルアイズ社の傘下に入ったとのことですが、その経緯なども教えてください。
平嶋氏:上場会社である株式会社トリプルアイズの傘下に入ったのは、グローバルに戦えるようになりたいという思いからです。トリプルアイズは、独自の画像認識AIを開発してます。SI(システム・インテグレーション)を行い、多くのエンジニアを抱えていますから、社会実装力もある。先端技術を持つ企業で、ゼロフィールドとのシナジーが高いと感じました。
ゼロフィールドは、日本だけでなく、アメリカやカナダのマイニング事業の上場企業とも対等に戦える企業になることを目指しています。アメリカやカナダでは、マイニング事業をする企業が多数上場しており、その中には、Riot PlatformsやMarathon Digital Holdingsなどの大手が含まれます。これらの企業は、マイニングの規模や収益性だけでなく、ビットコインの保有量やクリーンエネルギーの利用率などでも高い評価を得ています。弊社を、これらの企業と比較されても恥ずかしくない規模にしていきたいと思っていました。
そのためには、マイニングだけでなく、AIやインフラなどの事業でも技術力や信用力を高める必要があります。日本では、AIというとAPI連携やChatGPTを使うだけでAI自体を開発している企業は多くありません。ゼロフィールド独自でAIを開発しようにも、AI開発のバックグラウンドがない。そこでM&Aを検討し、AI開発企業やそれ以外の企業でもシナジーのありそうな相手を探していました。トリプルアイズ社は、私たちの求めていた技術を持っている企業でしたし、その傘下に入ったことで、ゼロフィールドは技術を追求できる体制になりました。私たちがこれまで培ってきた文化や価値観、技術を大切にしながら、トリプルアイズ社との連携を深めていきます。
実は環境に優しいマイニング
――では最後に、「マイニングやビットコインはエコじゃない」論についてもお話を伺えればと思います。
平嶋氏:たしかに、「マイニングは環境に優しくない」という指摘もあります。マイニングは電気を大量に消費するので、地球温暖化や環境破壊に影響しているということです。しかし、これは正しい見方ではありません。実は、マイニングは環境に優しいものです。
まず、マイニングは電気を無駄にしているわけではありません。マイニングは、つくられている電気を買って有効活用しているだけです。マイニングは電気をお金に変え、外貨を稼いでいますから、結果的には日本も豊かになります。
また、「余剰電力」の問題の解消策としても、マイニングは注目されています。電気を貯めるには一旦別のエネルギーにして貯める必要があるため、たくさんの電気を貯蔵しようとすると変換ロスによるエネルギー損失も増えてしまい、「余剰電力」が生じます。国内では東京電力パワーグリッド株式会社は、再生可能エネルギーによって発電された全国の余剰電力を有効活用するために、マイニングを実施する仕組みを手がけています。また海外では、廃棄される天然ガスをマイニングに活用しようという動きもあるようです。マイニングは24時間365日稼働させることができますから、これまで廃棄していた資源の活用手段としても有効です。
マイニングが世界の電力消費量に占める割合は、それほど大きくありません。ケンブリッジ大学のビットコイン電力消費指数によると、ビットコインのマイニングは世界の電力消費量の約0.6%とされています(2021年)。これは、スイスやベルギーの国家レベルの電力消費量と同程度です。また、ARK Investment Managementの調査によると、ビットコインが消費するエネルギーは従来の銀行システムに必要なエネルギーの10%以下であるということです。つまり、マイニングは、既存の金融システムよりも効率的にエネルギーを使っています。
今後、マイニングはよりサスティナブルな存在になる可能性があります。再生エネルギーだけでマイニングするGryphon Digital Miningのような企業も出てきており、環境に配慮した選択肢を増やしています。環境に優しいエネルギーの利用を促進することで、地球に優しい未来をつくることができるのです。ESG・SDGsの観点からも、マイニング事業への参入は一考の価値があると思います。
――本日は、ありがとうございました。ゼロフィールドさんのマイニングマシン・マイニング事業に関しては、説明動画で詳しく知ることができます。また、事業説明会も定期的に開催されていますので、興味のある方はぜひお申し込みください。
参考文献:
データセンター企業Soluna、米国で新たな仮想通貨マイニング施設を開発へ (coinpost.jp)
米マイニング企業Marathon、アブダビで大型施設立ち上げへ (coinpost.jp)
暗号資産マイニング「ビットディア株」、1カ月で122%急騰 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
仮想通貨マイニング企業ライオット 2024年の半減期に向け234億円の設備投資を実施 | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン
岸田首相「Web3サービスの利用拡大に向けた取り組み進める」 (coinpost.jp)
仮想通貨「保有で課税」見直し 24年度税制改正大綱 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
現物型ビットコインETF承認なら 1年間で価格は74%上昇=仮想通貨投資会社ギャラクシーが予測 | Cointelegraph | コインテレグラフ ジャパン