「web3に投資する前におさえておきたいビットコインの歴史」でお伝えしたように、2008年のサトシ・ナカモト論文をきっかけに誕生したビットコインですが、当初はきわめてマイナーな存在に過ぎなかったものの、この数年で認知度は拡大しました。今となっては、ビットコインという名を聞いたことがないという人の方が少ないでしょう。では、ビットコインはどのようにして普及してきたのでしょうか。
ビットコイン取引所とビットコインATMの増加
2010年に開設されたビットコイン取引所のマウントゴックスですが、2011年3月になると、ジェド・マケーレブ氏はティバン社(本拠地:日本)にマウントゴックスを売却します。同社は東京在住のフランス人プログラマーであるマルク・カルプレス氏が経営するウェブホスティング運営会社で、マウントゴックス社は日本に本社登記のある会社が運営する最初のビットコイン取引所になりました。
一時期、マウントゴックスは世界最大規模のビットコイン取引所でしたので、その本社がある東京・渋谷ではビットコインのミートアップが開催されていました。そこには、今では世界中で活躍している暗号資産関連事業経営者や開発者、投資家たちが集まっていました。「どうすればビットコインは普及するのか」「どうすればビットコインをより便利に使えるのか」「どうすればビットコインの価値は上がるのか」などが話し合われ、ビール一杯で一晩中語り合っていたほどです。
2011年の時点では、日本での取引所開設には登録も許可も必要ありませんでした。日本の金融庁が、「仮想通貨交換業者(現、暗号資産交換業者)」の登録制度を導入したのは、このずっと後の2017年4月のことです。
2011年には他にも、イギリスでは英国初のビットコイン取引所ブリットコインが、ブラジルではビットコインブラジルが開設されました。同年4月には、ビットマーケット・euが開設され、ユーロとズウォティ(ポーランドの通貨)を含む複数の通貨間での取引ができるようになりました。
「ビットコインや暗号資産を保有したい」と考えたとき、入手手段としてもっとも身近な存在は取引所でしょう。世界中で正当な取引所が増えていくことは、ホルダーとしては利便性も安全性も高まるといえます。
取引所以外では、2013年10月に、世界初のビットコインATMがカナダのバンクーバーに設置されました。ビットコインATMとは、現金によるビットコインの購入や売却に対応した現金自動預払機のことです。その後、徐々に設置台数は増えており、世界71カ国に設置されていて、台数は10,000台を超えています。
マウントゴックス事件が起こった2014年は、世界中でさまざまな企業がビットコイン決済の導入を発表して話題になった年でもあります。同年1月にはアメリカのネット販売大手のオーバーストックドットコム、6月にはオンライン旅行代理店大手のエクスペディア、7月にはパソコン大手のデルが、9月にはペイパルがアメリカ国内でビットコイン決済への対応開始を発表しました。また12月には、マイクロソフト社がアメリカ在住者限定でビットコイン決済の受付けを開始しています。2014年はマウントゴックス事件が強烈なインパクトを与えた年でしたが、今となっては「ビットコイン決済元年」と呼べるかもしれません。
日本では、2016年3月にDMM.comでビットコイン決済が可能になりました。DMM.comは、ビットコイン決済を導入した日本で最初の大手企業です。
メディア露出と認知拡大
取引所の開設やATMの設置は、実用面からビットコインの普及を促してくれましたが、一方でメディアの力も大きく貢献しています。
2009年時点では、ごく一部の人にしか認知されていなかったビットコインの存在は、2010年7月にコンピューター系ニュースを中心に取り扱うアメリカの電子掲示板「スラッシュドット」に取り上げられ、世間に知れ渡るようになりました。
その翌年の2011年4月には、イギリスのタイム誌が「真のデジタルキャッシュ」としてビットコインの特集を組み話題になります。初めて大手メディアに取り上げられたことや、武器などの密売を行っていた闇サイト「シルクロード」における麻薬取引の決済にビットコインが使われたことなどで注目され、6月に入ると1BTCが一時31.91米ドルまで上昇しました。
闇サイトなどの犯罪で使用されることは、極めてネガティブ情報ではありますが、視点を変えればビットコイン取引には具体的な需要があることの証でもあり、投資対象と見なす人も存在したということでしょう。
日本では、2013年12月に初めてNHKが番組でビットコイン特集を組みました。この放送や2014年のマウントゴックス事件をきっかけに、多くの日本人がビットコインを知ることになったと言えます。
その後は、ビットコインや暗号資産に関する情報を発信するメディアや個人・インフルエンサーは年々増加していきます。ポジショントークをするメディアやインフルエンサーが多い世界ですから、情報を鵜呑みにすることがないようご注意ください。
着実に進む法整備
ビットコインをはじめとする、暗号資産に関するルールの整備も各国で進められました。
2015年8月には、ニューヨーク州金融局がビットコイン関連事業者のライセンス制度「ビットライセンス」を世界に先駆けて施行しています。これによって、ニューヨーク州でビットコイン関連事業を行うにはライセンスの取得が必要になりました。その審査は極めて厳格かつ煩雑で、結果、多くの暗号資産関連事業者がニューヨーク州から撤退するといった事態を招聘します。しかしこれはビットコインユーザーから見れば、事業者の選別が行われ低劣な事業者が淘汰されたということでもあり、取引に関して安心感が増すことになったとも言えるのです。
日本では、2017年4月1日に「改正資金決済法」が施行され、当時定義された「仮想通貨交換業(現 暗号資産交換業)」の要件を満たす「仮想通貨交換事業者(現 暗号資産交換事業者)」は登録が必要となりました。ビットコインをはじめとした暗号資産での取引は、金融庁の監督を受けることになったのです。法整備はデメリットばかりではなく、今まで参入しにくかった企業が業界に参入する可能性を広げ取引の機会が多くなるメリットも生むのではないでしょうか。
参照元:金融庁HP「暗号資産関係」
次回は、ビットコインに関する未来予測についてお伝えします。
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