2022年11月に起きた、大手暗号資産取引所・FTXの経営破たんと連鎖倒産によって、「クリプトの冬」はさらに深まっています。では、そんな厳しい冬をどのように越すのがよいのでしょうか。本稿では、クリプトの冬の過ごし方について解説します。

FTXの経営破たんで「クリプトの冬」が本格化

2022年11月に破たんしたFTXは2019年に設立され、その後急成長。日本を含めた世界各国で暗号資産取引所(日本では暗号資産交換業)事業等を展開していました。創業者のサム・バンクマンフリード氏がCEOを務め、暗号資産業界の未来を担う若き経営者としても注目されていました。

そんなFTXの破たんのきっかけは、暗号資産関連のニュースサイトが11月初めに「FTXの財務の健全性を疑問視する」内容を投稿したことです。その後、世界最大級の暗号資産取引所であるバイナンスのCEO・CZが同月6日、保有していたFTX発行の資産を清算するとツイッターに投稿したことでFTXの経営への懸念が拡大しました。

8日になると、バイナンスがFTXの買収を検討しましたが、翌日には撤回され、投資家らがFTXから資金を引き出す動きが加速することになります。そして、11月11日にはアメリカ連邦破産法第11条(チャプターイレブン:日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う)の適用をアメリカの裁判所に申請し、FTXは経営破たんしました。法律の適用は、日本法人を含む約130のグループ会社にまで及びます。

FTXの負債総額は、推定で100億ドル~500億ドルになる見通しです。債権者は100万人を超える可能性があり、約14年の暗号資産の歴史に残る出来事と言えるでしょう。

連鎖倒産で冬どころか極寒に

FTXの経営破たんは、個社だけの問題ではありません。FTXから支援を受けていた暗号資産貸付サービス会社のBlockFi(ブロックファイ)も、11月28日(現地時間)、アメリカ連邦破産法第11条を申請し、破たんしました。破産申請したのは、BlockFiとBlockFi TradingやBlockFi Venturesなどの関連会社8社です。FTX破たんの影響は、他の企業やプロジェクトへと波及が継続するものと見られています。

2022年に入り、すでに「クリプトの冬」と呼ばれる低迷期にあった暗号資産業界ですが、FTXの破たんと連鎖倒産によって、さらに厳しい冬の時代になったと言えるでしょう。

しかし、FTXの破たんのきっかけになったのは財務の健全性や資金管理の問題。つまり、経営のずさんさです。これを教訓に今後、カストディや監査の方法など、法整備が進むでしょう。これまで「厳しすぎる」と批判もあった日本の暗号資産交換業関連のルールが、世界のスタンダードになる可能性もあります。

クリプトの冬の過ごし方

では、そんな極寒の時代を投資家としてどのように過ごすのがよいのでしょうか。

私は長期保有者として、何度もこのようなクリプトの冬を経験しています。2014年のマウントゴックス事件しかり、2018年のコインチェック事件しかり。今回のFTX騒動も、一事業者の破たんに過ぎず、ビットコイン等の暗号資産そのものの問題ではありません。

世界的にはまだまだ法整備が追い付いておらず、既存の金融業界の人から見ればあり得ないような管理が暗号資産の世界ではされているのでしょう。各国で法整備が進み、また国際的なルールが整備され、個人投資家も機関投資家も参入できる環境が整えば、暗号資産業界はまだ伸びしろがあるのではないでしょうか。

2014年のマウントゴックス事件の後も、2018年のコインチェック事件の後も、暗号資産業界への資金流入は伸び続けてきました。一時的な低迷期は数年に一度のペースで訪れるものの、長期的に見れば拡大傾向にあります。

極寒の時代にこそ暗号資産に関する見識を広げ、長期保有を続けるか、ドルコスト平均法などで買い増すのも選択肢の一つです。また、クリプトの冬の期間に着々と種まきがされている暗号資産関連のスタートアップ企業もあります。なんらかの形で業界に参入するのも一考なのではないでしょうか。


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この記事を書いた人

中島宏明

経営者のゴーストライター
(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
  
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。