第5回 「金利上昇の可能性と不動産投資における融資評価」
アメリカ時間8月27日金曜日(日本時間28日土曜日)に世界の金融関係者が注目した、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の講演が行われました。その中で、金融緩和の段階的な引き締め策(テーパリング)に関し「年内の開始が適切だろう」と表明しました。
7月に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨ではテーパリングについて「雇用の条件が年内にも達成される」としていましたが、パウエル議長も雇用の回復に自信を示した形となりました。具体的なテーパリングの開始時期は明言しませんでしたが、年内残り3回(9・11・12月)のFOMCのいずれかで明確な修正シナリオが出てくるものと思われます。物価上昇について、「インフレの加速は一時的」という姿勢も変わりませんが、米国消費者物価指数は13年ぶりの高い上昇率を示し、また8月27日発表の個人消費支出でPCEコアデフレーターは30年ぶりの高い上昇率。テーパリングに続いて、利上げの対応も早まる可能性も出てきました。しかしながら、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスのデルタ型の感染拡大には警戒感を示し、こうしたFRBの施策が今後どうなるかは、依然不透明のままとなっています(執筆時:21年8月30日)
一方、韓国では、カネ余りの長期化で消費者物価指数は4カ月連続で前年比2%超え、不動産価格も高騰しており、また、家計負債も急増していることから利上げは不可避との判断から、韓国中央銀行にあたる韓国銀行は、8月26日(木曜日)に政策金利引き上げを行いました。デルタ型のまん延で、ほかの先進国が金融緩和策を継続する姿勢を見せる中、いち早く利上げに踏み切った格好となりました。
こうした利上げを伺う動きがある一方で、日本(日銀)では、今のところ、こうした気配はありません。GDP、消費者物価指数、景気動向どれをとってもまだ議論を始める段階になり、という状況です。
ほとんどの専門家は、「その時期はまだ先だろう」が大方の見方のようですので、いましばらくは、現在のような金融緩和政策・低金利が続くものと思われます。
しかし、いつか来るかもしれない利上げを見込んで、「低金利の時に、できるだけ借りておこう」という思惑が、今後さらに広まっていくかもしれません。こうした流れで、できるだけ借り入れをして不動産を買いたいと思う人が、まだまだ減る気配がありません。
投資用の不動産を個人の方(個人会社含む)が、いくらまで借りられるかは、2つの大きな視点があります。
1つは、購入者の与信の状況、もう一つは金融機関が判断する物件の価値です。与信については、それぞれの状況により異なりますので、ここでは触れませんが、2つ目の物件の価値(つまり担保評価)については、購入者ではなく物件自体の評価で決まります。
では、どんな物件の評価が高いのでしょうか?
不動産投資をする多くの方が、物件金額に対してできるだけ多く借りたい(LTVを高くしたい)と考えると思います。物件価格に対しての融資比率は、例えば物件価格1億円の物件に対してその物件の金融機関の担保評価がいくらか?ということになります。極端な例ですが、相対的に安く入手できれば、満額の融資が付くこともあり得ます。
一般的には、融資は、立地、建物のグレード、開発(販売)するデベロッパーの信用、デベロッパーと金融機関の関係などで、評価が決まると言われています。ひとくくりにざっくり言えば、物件の信頼性ということになります。
また、この物件の評価は、物件を手放すときにも大きく影響します。中古物件として次に買われる方も、なるべく、手持ち資金を少なくして購入したいと考える方が多いと思いますので、物件評価が高い物件の方が次に売る際に売れやすくなるということになります。こうした視点も、不動産投資には、必要なことと言えるでしょう。