ご自身の葬儀を想像したことはあるでしょうか? 葬儀は、最期の在り方が表現される場ですから、どのように送り出されたいかをご自身で考える、あるいはご家族と一緒に考える時間を生前につくっておくと良いかもしれません。現代は、葬られ方もさまざま。ご自身の想いはもちろん、ご家族の理解も大切です。葬儀の方法は、相続対策や資産承継と同様、まだ元気で健康なときにこそ検討しておくと良いでしょう。今回は前編に続き、宇宙葬・宇宙生前葬のサービスを提供している、株式会社 SPACE NTKの代表取締役・葛西智子氏にお話を伺いました。

インタビュイー:株式会社 SPACE NTK 代表取締役 葛西智子氏

(葬儀プランナー/トータルプロデューサー)

株式会社 SPACE NTK公式サイト

https://space-ntk.com/

インタビュアー:ライター 中島宏明

国際宇宙産業展に出展してみて

――今年2024年の2月には国際宇宙産業展にも出展されましたが、出展してみていかがでしたか?

葛西智子氏(以下、葛西氏):以前は、宇宙葬のことをお伝えしても「まったく知らない」という方がほとんどでした。しかし今回は、「知ってるけどよくわからない」という方がいらっしゃいました。葬儀というとご年配の方の話という印象を持たれるかもしれませんが、若い方にとっては「自分のDNAを打ち上げて、自分の分身が宇宙に行ける」という視点で関心を持っていただけました。

展示してみての印象は、ビジネスビジネスしておらず、学生さんや、宇宙とは関係のない企業の方、それも新人さんのような若い社員の方から会長クラスの方まで、幅広い方々がお越しになっていました。「宇宙事業ってどんなだろう?」という関心を持った方々がいらしていたと思います。

私たちのブースは、あえてロケットパネルだけの出展にしました。「宇宙に思いを届けよう」というメッセージが書かれていて、「なにをやってるんだろう?」と関心を持っていただけたようです。狙いが的中したのですが、「ロケットの会社ですか?」と言われることもありました。

ブースに置くパンフレットも厳選し、名刺交換も3日間で100枚だけとかなり絞り込みました。名刺交換した方とはしっかりと会話しているので、名刺を見れば会話を思い出せるほどです。

学生さんだけでなく、小さなお子さんも来場していました。幼稚園生くらいのお子さんもいて、将来は宇宙に関わる仕事をしたいそうで、すでに英語も習っていると話されていました。そういうお子さんを見ると、「一緒にアメリカに行こう」「行動すれば、どうにかなるよ」と伝えたくなります。アメリカではエンジニア採用が活発ですし、アメリカで勉強して働き、日本に帰ってきて活躍するという道もあると思います。宇宙葬を広めることに加えて、子どもたちへの教育も私の使命なのかもしれないと感じています。

人の尊厳を大切にしたい

――葛西さんの影響を受けて宇宙を目指す人が増えていきそうですね。宇宙葬を行う際に、葛西さんが大切にしているのはどのような点でしょうか?

葛西氏:「人の尊厳を大切にしたい」「一人ひとりをしっかりと見送りたい」という想いです。例えば、東京の方が旅行中に地方で亡くなったとします。できれば、ご遺体を寝台車でお運びしたいです。海外で亡くなると難しいのですが、現地で火葬すれば客室で手に持ってお運びすることができます。最期の最期まで、人としての尊厳を大切にしたいと思っています。ご遺体やご遺骨を物や荷物として扱ってほしくないのです。税関ではご遺骨証明書が必要になりますが、それはご遺族にお願いしています。

――葬儀業界での経験をお持ちで、葬儀のプロフェッショナルだからこその愛や哲学を感じますね。

葛西氏:そう仰っていただけると嬉しいです。来年からは、宇宙葬だけでなく月をお墓にすることもできるようになります。月面探査車で月に散骨するのですが、お一人1~10gまで、1g1000万円ほどの費用になると思います。月から地球のご家族を見守れるという、ちょっと壮大な葬儀の形です。専門家の方のお話では、月の周遊旅行は10年以内に実現できるそうです。イーロン・マスク氏は3年後と言っていますが、5~7年なら現実的ではないかという話をお聞きしました。月の下見ができるので、宇宙生前葬の一環としても良いかもしれません。

月の周遊旅行は100人乗りですので、できれば宇宙に夢を持つお子さんも乗せていきたいですし、障がいがあってもアメリカまで行くことができれば乗ることができるので、障がいをお持ちの方々にも月の周遊旅行に行っていただきたいです。そんな、ムーンドリームツアーも企画できたらと思っているのですが、どうしても大きな資金が必要になります。

――経営者の方や富裕層の方の出資で実現できるかもしれませんね。

葛西氏:いろいろな方々にご協力いただき、実現できればと思っています。例えば、宇宙に関わる著名な方や専門家とのトークショーを企画したり、宇宙食を食べながらのディナーイベントなどで宇宙葬やムーンドリームツアーのことを広めていきたいですね。今後は、宇宙葬だけでなく、「宇宙でプロポーズすること」や「宇宙での結婚式」「宇宙での出産」など、たくさんの世界初が起こっていくと思います。宇宙を夢の対象で終わらせず、宇宙事業をサービス化してもっと宇宙を身近にしていけたらと思います。

この記事を書いた人

WMJ編集部

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