NFTや暗号資産、ブロックチェーン、メタバースなどを内包する言葉として使用されるようになった「web3」。2021年頃からweb3領域への投資が活発になっていますが、はたしてweb3投資に意義はあるのでしょうか。

web3の基礎知識

「web3」という言葉をメディアやSNSで目にする機会が増えました。web3は「Web3」「Web3.0」と表記されることもあり、読み方は「ウェブスリー」「ウェブさん」「ウェブサンテンゼロ」などです。web3を理解するためには、web1とweb2について知る必要があるでしょう。

web1は、1990年代後半頃からの時代と定義されています。象徴的な商品は、Windows95です。PCが中小企業や個人に普及し始めた頃で、web1時代は、「ユーザーはRead(読むだけ)。企業や事業者はCreate & Make Money(つくって稼ぐ)」という関係性でした。

次のweb2は、2000年代頃からの時代と定義されています。象徴的な企業は、アメリカのGAFAです。SNSが生まれた頃で、フェイスブックやミクシィ、LINE、楽天、GMOなどの今では身近なIT企業が数多く誕生しました。web2の時代は、「ユーザーはCreate(つくる)。プラットフォーマーはControl & Make Money(管理して稼ぐ)」という関係性です。

では、web3はいつ頃からの時代なのでしょうか。一説では、2020年頃からの時代とされますが、「ビットコインが誕生した2009年がweb3元年である」という主張もあります。web3の時代は、「ユーザーはCreate(つくる)だけでなく、Control & Make Money(管理して稼ぐ)」もします。つまり、ユーザーと企業・事業者・プラットフォーマーの境界がなくなり、よりフラットな関係性になります。

なぜこの時代に、web3は生まれたのでしょうか。

web2時代、GAFAをはじめとするいわゆる「テック・ジャイアンツ」は、捉え方によっては一国よりも大きな影響力を持つようになりました。SNSは、TVや新聞、ラジオのようなオールドメディアに対するアンチテーゼとして生まれた、あるいはアンチテーゼ的に機能した面があります。ところが、やがてSNSもオールドメディア化し、力を持つようになっていきました。そんなテック・ジャイアンツ≒web2に対するアンチテーゼが、web3誕生の背景にはあるとも言えるでしょう。

しかし、web3はまだ始まったばかりです。web3がしっかりと定義されるのは、web4やweb5の時代が来てからではないかと思います。今はさまざまな主張がありますが、どの主張もある意味では正しく、どれが正解ということもありません。

NFTアートもメタバース不動産もオーバープライシング

「web3」なる言葉が生まれたことで、web3領域への投資が活発になりました。なかでも顕著なのは、NFTやメタバースへの投資でしょう。

「NFT銘柄」「メタバース銘柄」と呼ばれるような、NFT関連株やNFT関連コイン、メタバース関連株やメタバース関連コインへの投資も盛んに行われていますが、投資の世界で盛り上がっていたのは個別のNFTアートやNFT不動産、メタバース不動産への投資です。

世界中で高額取引が行われ、メディアやSNSでも話題になりました。しかしながら、NFTアートやNFT不動産、メタバース不動産そのものは「オーバープライシングである」というのが私の個人的な見解です。

メタバースは、3D空間+アバター+交流機能(音声チャットなど)+生態系(エコノミー)によって構成されます。美しい3D空間や個性豊かなアバターが注目されがちですが、もっとも重要なのは「生態系(エコノミー)」です。生態系とはつまり人流があるかどうか。人のいないメタバースは無価値でしょう。交通量のない現実世界の土地に高い値段がつきにくいのと同じことです。ただし、リゾート地であれば別ですが。

メタバースが流行っていることは確かですが、「今日はメタバースで打ち合わせしましょう」と言われることも極めて稀ですし、ほとんどの人はメタバースを体験したこともないでしょう。まだまだ人流がないのがメタバースなのです。

すでにNFT不動産やメタバース不動産を購入している場合は、「クリプトの冬」を耐え忍び、次のクリプトサマーが来るまでじっと待つか、勉強料と捉えるしかありません。

IT企業投資バブルと重なるweb3企業投資バブル

web3投資やメタバース投資は、現状はただのバブルだと私は捉えています。かつての六本木ヒルズのIT企業バブルが、シンガポールやドバイのweb3企業(あるいはweb3DAO)バブルになっているだけです。数々のweb3企業・web3DAOが生まれ、そのほとんどが消滅するでしょう。

web3投資は、事業投資と同じです。事業である以上は、経営陣に関する情報や事業計画などを収集、検討した上で、投資対象となり得るかどうかを判断する必要があります。

M&Aで事業を買う場合は、収支や事業計画を確認するはずです。株式投資をする場合も、業績や経営陣に関する情報を調べるでしょう。ところがweb3に投資する人の多くは、ギャンブルや宝くじのように捉えている傾向があります。これは極めて残念なことです。

よく調べずに安易な気持ちで投資すれば、失敗の確率は上がります。運営者がわかっている場合は、それらのビジョンやミッション、事業計画はどのようなものか。そして事業計画は、実現可能な内容なのかどうか。経営者や経営陣の経歴や実績は、事業計画の実現性を支え得るものなのか。さらに経営者や経営陣の人柄はどうかなど最低限のリサーチを行い、投資するかどうかを判断する方が良いでしょう。自分で情報を集め、自分で学び、自分で判断することで、web3に対する鑑識眼が養われていくと思います。

この記事を書いた人

中島宏明

経営者のゴーストライター
(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
  
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。