年間約1,000名を超える社長と会い続けている杉浦佳浩氏が、さまざまな経営者・起業家にインタビューする「代表世話人(だてにはげて)の企業発掘」。第4回目の今回は、スタイリストとして世界中で活躍するYOSHI MIYAMASUさんに話をお聞きしました。

インタビュイー:YOSHI MIYAMASU氏

YOSHI MIYAMASU氏の公式サイト

https://www.yoshimiyamasu.com/

インタビュアー:代表世話人株式会社 杉浦佳浩氏

英語学科の学生がスタイリストの道に進んだ理由

――MIYAMASUさんは世界中の富裕層、セレブとお付き合いがあるわけですが、今日は「富裕層はスタイリストとどのように付き合っているのか?」をお聞きしたいと思います。まずは、自己紹介からお願いします。

YOSHI MIYAMASU氏(以下、MIYAMASU氏):実は、最初からスタイリストを目指していたわけではなくて、「海外で活躍したい」という夢があり、就活のときは商社マンを志望していました。交換留学でサンノゼに滞在したのですが、帰国後の就活では商社志望。その夢は叶わなかったのですが、留学中にサンフランシスコでCalvin Kleinの広告をみたことがありました。サンフランシスコは建物が低いので、広告が映えるんです。

広告をみて、「こういう仕事があるんだ」と知って。当時、私は英語学科の学生で人とコミュニケーションを取る仕事に興味があったので、広告の仕事の中でもスタイリストを目指すことに決めました。その後、バンタンという服飾の専門学校で賞を取ることができました。現役のスタイリストから指導を受けられる学校で、とても良い経験ができたと思います。日本で仕事をするか海外でするかで悩んだのですが、やはり海外で活躍したいという夢があったので海外に出ることにしました。エージェンシーを介してニューヨークのスタイリストとご縁ができ、2001年にはニューヨークへ。日本とニューヨークを行ったり来たりする生活になりました。

9.11以前の活気あるニューヨークをみることができたのは、良い経験になりましたね。もちろん今のニューヨークも活気はあるのですが、やはり9.11以前とは違うなと感じます。

「ファッションで気分が上がる」という感覚を知ってほしい

――その後、日本に帰国して独立されたのですか? MIYAMASUさんは、レディースとメンズ両方のスタイリングをするとお聞きしていますが、それは珍しいことなのでしょうか?

MIYAMASU氏:2003年に東京でスタイリストになり、独立しました。スタイリスト以外に、ファッションショーのコンサルティングの仕事もしていました。ファッションショーのコンサルティングというのは、デザイナーの意見等をスタイリングに落とし込み、ファッションショーを具体化していく役割です。男女でスタイリングは全然違うため、レディースとメンズの両方のスタイリングをできるのは珍しい存在だったと思います。

――MIYAMASUさんは、ファッションを通じてどんなことを実現したいですか?

MIYAMASU氏:「ファッションで気分が上がる」という感覚を知ってほしいし、大切にしてほしいと思います。スタイリングは、セレブや一部の人だけのものではありません。もっと世界中のたくさんの人に、スタイリングの魅力を知ってほしいですね。

日常のファッションはもちろんですが、特別な日に着たい服もあると思います。「これを着ると背筋が伸びる」というような、佇まいや立ち居振る舞いを変えてくれる服もあります。シーンに応じたスタイリングがあるので、日常から非日常までファッションを楽しんでいただき、気分が上がる瞬間を味わっていただきたいと思います。

――MIYAMASUさんは、なぜ海外で活躍できるのでしょうか?

MIYAMASU氏:私の場合、サンノゼの大学やニューヨークのアシスタント時代での現場で生の英語を習得できたので、日本だけでやろうという気持ちは最初からまったくなかったですし、物怖じしない性格も功を奏したのだと思います。あとはご縁ですね。

ニューヨーク時代の仲間が世界中で活躍していて、彼ら彼女らから紹介されることもあります。また、「Dazed & confused」というロンドンのファッション誌は音楽とかかわりが深い雑誌なのですが、20代の頃にその雑誌の編集に携わった経験があります。当時の仲間がみんな編集長やディレクターになっており、そういったつながりが基盤になって仕事が広がっています。今はエージェント会社に所属してスタイリストとして活動しているのですが、過去のご縁が今につながっていますね。

富裕層・セレブとスタイリング

――セレブのスタイリングを担当するとき、どんなことに気をつけていますか?

MIYAMASU氏:「どんなシチュエーションで、なぜこれを着るのか?」という理由を明確にして臨んでいます。セレブの方は、自分にとって合うかどうかを大切にします。もちろん、哲学や美学も持っています。セレブのこだわりにどう対応するか?は、スタイリストとしての腕の見せ所です。トレンドもありますが、体型や肌の色などとの相性もあります。

また、アーティストの方であれば、新曲のリリースに合わせてメディアに出ることがあります。新曲が違えば、スタイリングのコンセプトも変わります。コンセプトと媒体、メディアに出る目的などを総合的に考えてスタイリングをしていきます。また、アパレルブランド側の意図もありますから、本人の希望と折り合いをつけていく必要もあります。

――なかなか折り合いがつかなかったことはありますか?

MIYAMASU氏:今はどんな状況にも柔軟に対応できるようになりました。スタイリストとして駆け出しの頃は、自分のこだわりやトレンドに固執していたと思います。撮影時のモデルやタレントのスタイリングにおいては、トレンドをおさえた方が良いのですが、それを富裕層やセレブのパーソナルスタイリングのときにも押しつけていた反省があります。パーソナルなスタイリングにおいては、特にトレンドだけでなく本人が納得することが重要であり、トレンドは二の次。次のステップだと今なら思えます。

――最近スタイリングを担当されて、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか?

MIYAMASU氏:最近はハイブランドがインスタグラムでマーケティングなどの展開をしているのですが、ドバイのZufi Alexanderというバッグデザイナーは、自身もインフルエンサーになり、インスタグラムのフォロワーは100万人以上です。デザイナーが自分でも発信力をつけて、インフルエンサーとしても活動するというのは今ならではだと思います。

Zufi Alexander氏のインスタグラム

他には、「異次元の祭典」と呼ばれるバーニングマンというアメリカのフェスがあるのですが、このフェスは砂漠で開催しています。あるセレブが参加されるということで、開催期間のスタイリングを任されました。フェスに合わせて、かなりアバンギャルドなブランドを紹介しました。

セレブの方は、富裕層を招いてパーティーをしたり、音楽祭をしたり、独自の体験が好きな方も多いです。あるハイジュエリーブランドは、年間1億円以上を購入するお客様だけを招待してイベントを行っています。そのプロデュースを担当することもあります。フレンチやシャンパンを楽しみながらファッションショーをみるイベントです。100名ほどの方々が参加し、約半分が日本人の方でした。

経営者・起業家とスタイリング

――富裕層・セレブの方の他にも、お名前は出せませんが著名な経営者・起業家のスタイリングも担当されているのですよね?

MIYAMASU氏:はい。経営者の方には、株主総会や若手起業家との集まりなど、シーンに応じたスタイリングを行っています。経営者はみなさんご多忙なので、2時間のセッションでたくさんのシーンに応じたスタイリングを決めていきました。

ご本人にもこだわりや美学がありますから、セッションしながらスタイリングをご提案していきます。「新しいものを着たい」「心が躍るようなものを着たい」という人もいらっしゃるので、今ならインスタグラムなどでご本人のアカウントをみてリサーチしています。とても便利ですよね。最近着ているものや、過去の写真もみながらスタイリングをご提案することができます。「ストライクゾーンのもの」「良い意味で期待を裏切るもの」「もっと意外なもの」など、複数パターンお持ちしてご本人と相談しながら決めていきます。経営者の方ですと男性が多いのですが、ご夫婦のスタイリングを相談されることもあります。

最近は、経営者の方がメディアに露出することが増えていると思います。その際のコーディネート、スタイリングのオファーも増えています。中には、デザイナーをご紹介して衣装制作をすることもありますよ。

日本の経営者や起業家にスタイリングは必要か?

――日本の経営者・起業家には、「シーンに応じてスタイリングに気を遣う」という文化はあまりないかもしれませんね。MIYAMASUさんのような世界的なスタイリストの方に、日本の社長をもっとカッコよくしてほしいなと思います。

MIYAMASU氏:ありがとうございます。会社のブランディングや採用強化のために経営者の方がメディアに出演されることもあると思います。代々続く地方の企業であれば、世代交代によるリブランディングのニーズもあるかもしれません。そういったときに、お声がけいただけたらと思います。

――上場時には証券取引所の鐘をつくわけですが、そのときにグレーのスーツ姿で良いのか?とも思います。二代目社長や地方の名士、上場企業の経営者にもスタイリングは必要ですね。世代交代でコーポレートサイトやリクルートサイトをリニューアルし、そこに掲載するプロフィール写真のスタイリングというニーズもあると思います。地方に行けば、事業承継の問題と二代目社長、三代目社長の婚活の問題は跡継ぎという観点ではセットの問題です。やはり日本の経営者にはスタイリングが必要なのではないでしょうか。

MIYAMASU氏:ぜひ、ご本人の魅力を引き出すスタイリングをしたいと思います。服だけでなく、髪型なども美容室をご紹介して、トータルでスタイリングさせていただきます。視覚で訴えられるので、言葉以上に伝わることもあると思います。

髪も、普段とは違う美容師・スタイリストにカットしてもらうと印象がガラッと変わります。経営者・起業家の方も、気分が上がることはとても大事だと思います。仕事のパフォーマンスにも影響するでしょうし、業績にも影響があるかもしれません。経営者・起業家の方は忙しくて、見た目に気も時間を使えないと思いますから、スタイリングという日々の意思決定をプロに任せていただければ。「意外と自分に似合う」と、新たな発見をしていただけると、スタイリストとしては気分が上がります。それが私の仕事のモチベーションになり、そんな姿をみられると自分も嬉しいですね。新たな自分の発見のお手伝いができたらと思います。

――WMJで、社長やIFAの変身企画などできたら面白いかもしれませんね。

MIYAMASU氏:百貨店やセレクトショップなどにご一緒して、セッションしながらご提案させていただきます。1週間分のスタイリングや、特別な日のためのスタイリングなど、複数ご提案できますので、ぜひ今後企画させてください。

YOSHI MIYAMASUさんのご紹介

Profile

2001年にニューヨークでトップスタイリストたちのアシスタントを経験し、2003年から東京でスタイリストとして独立後に雑誌、広告、カタログ、セレブリティー、ショーのコンサルティングと幅広い媒体の中で、Yoshiらしい新鮮なミックス感のあるスタイリングと洗練されたイメージの打ち出しに定評がある。ファッションで自分のイメージ演出していくことの楽しさを数多くの人々に伝えていきたいと考え、スタイリングのみならず、あらゆるシチュエーションのイメージ作りを得意とし、フォトコーディネーションは国内外のクライアントからの信頼が厚い。

(公式サイトより https://www.yoshimiyamasu.com/

この記事を書いた人

杉浦佳浩

大阪府出身、1963年生まれ。新卒で三洋証券株式会社に入社し営業として活動。その後、キーエンスを経て、住友海上へ(現:三井住友海上)。20年間多岐にわたり同社にて活動する。2015年独立し、代表世話人株式会社を設立。現在数十社を超える会社において顧問として、世話人役を務める。紹介のみで、年間約1000名を超える社長と会い続けている。りそな銀行(りそなCollaborare)にて執筆中。