なぜヨーロッパのサッカークラブは上場するのか?
ヨーロッパの各国にはほぼ1国1プロリーグが存在します。昇格・降格のある開放型リーグ(*1)のピラミッド構造により、上位リーグから下位リーグ、アマチュアリーグに至るまで、ヨーロッパの隅々までサッカー文化・経済の生態系が広がっています。
上位リーグに昇格し、定着して戦い、上位進出や優勝を勝ち取ることを第一目標とするサッカークラブ経営において、クラブとしてチーム(選手・監督、トレーニング施設、スタジアム、ユース開発、etc…)へ投資しなければなりません。その金額は、1990年代以降のサッカービジネスのグローバリゼーションの大きなうねりの中で、年を重ねるごとに増加してきました。特に、リーグ規模が大きなUEFA上位のリーグ(*2)や、Champions League(以下、CL)(*3)で勝ち上がるための投資金額はより大きなものになります。
その投資のための資金調達として、株式公開による上場を1つの手段として取るクラブがヨーロッパには存在します。
サッカークラブ株の特徴的な値動き
サッカークラブ株には、一般の上場会社とは違ったいくつかの特徴的な値動きを見ることができます。
1.ピッチ上の成績による値動き
リーグ優勝やCL優勝のような、ピッチ上での高パフォーマンスが株価にダイレクトに影響するのが、サッカークラブ株の特徴の1つです。イングランドのマンチェスター・ユナイテッドを例に見てみましょう。2012年9月12日時点の株価は12.18USDでしたが、優勝する気運が高まり始めると徐々に値を上げ始め、最終的にリーグ優勝を飾った2012-13シーズンは2013年5月2日時点で19.04USDの高値を記録しました。半年の間に株価が1.56倍に上昇したことになります。
2.選手移籍による値動き
スター選手の加入が株価に与える影響が大きいのも特徴です。2018年7月10日にスーパースターであるクリスティアーノ・ロナウドがスペインのレアルマドリードからイタリアのユベントスへ移籍しました。移籍したその日、株価が急騰し0.827€の値を付けました。2018年5月31日時点でこの年の最安値0.5434€を付けたユベントスの株価から短期間で1.52倍となったことになります。一人の選手の移籍が、市場の株価へ影響を与えるほどの大きなトピックとなり得るのがサッカークラブ株です。
3.リーグ規約・ルール変更等の大きなイベントによる値動き
サッカーが好きな方ならご存知かもしれませんが、2021年4月は世界のサッカー界を揺るがす事件が起きました。Europa Super League(以下、ESL)の立上げがヨーロッパの12ビッグクラブから2021年4月18日に突如発表されたのです。しかし、その直後から世界中のサッカーファンの猛反発に合い、あえなく頓挫してしまいました。この狂騒曲の動きに連動するように、サッカークラブの株価も上下しました。設立が発表された2021年4月19日時点で、渦中の中心にいたユベントスの株価は4月16日(金)から19日(月)の週末を挟んだ1日で0.773€から0.911€に急騰しました。しかしその後、ESLが頓挫すると分かるや否や、株価も急落してしました。
このように、サッカークラブ株は実際の決算業績とは関係ない要素により上下する特徴を持っている面白い株式になります。
上場している16クラブを一挙ご紹介
現在上場しているヨーロッパのサッカークラブを以下にご紹介します。皆さんのお気に入りのクラブ、気になるクラブはございますか?
いかがでしたでしょうか。株式投資としてキャピタルゲインを狙う、配当を狙う等、は難しい銘柄が多いですが、サッカークラブの株式を購入し、オーナーとしてサッカークラブを応援してみるのも、株式投資の楽しみ方の1つとして面白いかもしれません。
*1: 開放型リーグとは、複数の階層からなるリーグ構成において、シーズン終了時の競技成績に応じ、上位リーグの成績下位チームと下位リーグの成績上位チームが入れ替わるシステム(昇格・降格)。一方で閉鎖型リーグとは、リーグ参入権を与えられたクラブのみでリーグ戦が行われるシステム。上位リーグへの昇格、下位リーグへの降格がない。リーグの拡大時に新たな参入権の付与が行われ、またリーグ規定によるクラブの入れ替えも実施される(競技成績とは無関係)。
*2: UEFA club coefficient rankings
*3: Champions League(チャンピオンズ・リーグ)とは、ヨーロッパのUEFA club coefficent rankingsで上位にあるリーグチャンピオンが参加する、ヨーロッパNo.1クラブを決めるUEFA主催の国際サッカー大会のこと。