現在の不動産市況は、例えば新設住宅着工戸数は総戸数では3月以降4カ月連続の前年同月比プラスが続き、投資の多い貸家カテゴリーも同じく3月以降4カ月連続のプラスなど、数字だけ見ていると、比較的活況と言えますが不動産投資の専門家はどう見ているのでしょうか。
(財)日本不動産研究所が21年5月末に発表(調査時点は21年4月)にした調査結果(第44回不動産投資家調査)を基に分析してみたいと思います。
今後投資家は積極的に不動産投資を行うのか
この調査は、不動産投資の専門家(普段、業としている)、アセットマネージャーやデベロッパー、レンダー(金融機関)生損保、年金基金、投資銀行の担当者を対象にアンケートを行った物で、「不動産投資専門家の生の声」がうかがえます。
アンケート結果では、今後1年間の投資に関する考えは、94%が「今後も新規投資を積極的に行う」と回答しています。前回昨年10月(11月公表)の調査よりも2ポイントの上昇となりました。
金融緩和が一段と進んでおり金融機関から借りやすくなっていること、株式も比較的2万円台の後半で安定していることなどを背景にして富裕層が投資に積極的になっていること、また資金調達がしやすくなっていることがうかがえます。こうした投資マネーの行き先が国内不動産になっているわけです。
一方で、「当面、新規投資を控える」と保守的な解答をされている方は7%で、前回よりも4ポイント低下し、不動産投資においては新型コロナウイルスの影響は少なくなっていると言えそうです。
しかし、キャップレートなどをみると、プロパティスタ別で状況は様々となっています。
期待利回りの変化は?
最新(21年4月分)では、東京(城南地区)における賃貸住宅1棟モノ(ワンルーム)の期待利回りは4.2%と前回調査と同じ(横ばい)でした。また、ファミリータイプでは4.3%でこちらも横ばいとなっています。この調査においては、同地区は2010年4月分調査から一貫して期待利回りは、1棟モノワンルーム・ファミリーとも低下し続けていますが、ここに来て「さすがにこのあたりが期待利回りの底か?」と考える方が増えてきているのでしょう。
期待利回りの低下は、つまり、賃料が同一ならば価格上昇ということです。さすがに4%台前半となった2019年中頃からは、期待利回りの下落幅は小さくなりました。城南エリアにおいては、新型コロナウイルスの影響が大きく出た20年4月の調査においても19年と変わらず横ばい、20年10月分、そして今回21年4月分も4.2%で横ばいとなりました。
札幌・仙台・名古屋・京都・大阪・広島・福岡でも前回と同じ(横ばい)で、横浜と神戸は0.1ポイントの低下(賃料同一なら価格上昇)となっており、コロナウイルスの影響はもはやないといっていいでしょう。
現在の不動産市況はピークなのか?
不動産市況においてはサイクルを見定めることはとても重要な事です。それでは不動産投資の専門家は現状をどうみているのでしょうか?
新型コロナウイルスの影響が出る前19年10月時点の市況感は、どうだったのでしょうか。
「ピーク最高点」との回答が多く、半年後の予測ですが、前回調査では半年後(つまり今回調査時点)はピークをやや過ぎた感じと答えた方が多かったのですが、今回の調査では「半年後もまだピーク」との回答が最も多く見られました。とくに、レジデンス系への投資意欲が旺盛のようです。
このように、現在の不動産投資家は、「投資意欲が旺盛な状況が続いていながらも、物件種別は選んで投資をしている」という状況のようです。