保険は本来「リスクに備えるもの」ですが、「資産設計・承継」の戦略ツールでもあります。近年、国際的・国内外でビットコインや暗号資産の制度化が進む中で、保険領域においても新たな接点が生まれ始めています。本稿では、運用性保険商品でのビットコインETF・暗号資産ETFの導入や、保険料のビットコイン支払い、保険金のビットコイン受け取りなど、保険と暗号資産の交差点を読み解きます。

保険はリスクマネジメント+資産戦略

前提として整理すべきは、保険の役割です。
保険は本来的には災害や事故、病気や死亡などのリスクに備えるための金融商品ですが、単なる保障商品というわけではありません。

・相続対策
・資産保全、資産承継
・長期資産運用

といった機能も担う、資産設計の中核的なツールです。
そして現在、この「リスクマネジメント+資産戦略」としての保険に、暗号資産という新たな要素が接続され始めています。

暗号資産ETFと変額保険

ビットコインや暗号資産そのものを直接組み込んだ保険商品は、現時点では一般化していません。
しかし、ビットコインETFの登場により状況は変わりつつあります。

ETFは既存の金融商品であるため、変額保険の運用対象に組み込むことが可能になりました。

まだ日本国内の保険商品にはありませんが、すでに海外では保険商品を介してビットコインETFで運用が可能になっています。

変額保険を経由してビットコインETFに投資する未来は、日本でもいずれ実現するでしょう。

AXAスイスの事例「保険料のビットコイン支払い」

ビットコイン・暗号資産と保険の接点として、他にも実現している事例があります。
それが、AXA Switzerland(以下、AXAスイス)による取り組みです。

2021年以降、AXAスイスでは生命保険を除く一部保険商品において、ビットコインでの保険料支払いが可能となりました。

ただしこの仕組みは、

・顧客がビットコインで支払う
・決済事業者がスイスフランへ転換
・保険会社は法定通貨で受領

という構造です。

つまり、暗号資産が「保険契約そのもの」に組み込まれているわけではなく、「決済手段」として採用されている段階です。

それでもこの事例は、暗号資産が保険の世界に入り始めた象徴的な一歩といえます。

損保から生保へ、広がる「保険×暗号資産」の可能性

AXAスイスの事例が示しているのは、まず損害保険領域から導入が進むであろうという流れでしょう。

これは合理的で、損害保険は生命保険に比べると短期契約が中心であり、価格変動リスクや制度的制約をコントロールしやすいためです。

生命保険は、「長期契約」「資産運用機能」「税務・規制の複雑性」を伴うため、導入のハードルが高くなります。

しかし裏を返せば、制度整備が進めば生保への展開余地は極めて大きいとも言えます。

ビットコイン保険料支払いから「ビットコイン保険金受け取り」への可能性

現在は「保険料のビットコイン支払い」が先行していますが、その延長線上には次の段階が想定されます。

それが、保険金をビットコイン・暗号資産で受け取る設計です。

これは現時点では一般化していませんが、以下の観点から合理性があります。

・インフレ耐性
・通貨分散
・国際資産移転の容易性

特にグローバルに資産を持つ富裕層にとっては、「どの通貨で受け取るか」=「どの価値を未来に渡すか」は重要な意思決定です。

保険会社の視点「ビットコイン・暗号資産は運用対象になり得るか」

保険会社自身も巨大な機関投資家です。
そのため、ビットコイン・暗号資産は「顧客向け商品」だけでなく「運用対象」としても検討されるでしょう。

現状では、
・ETF経由での間接投資
・リスク資産の一部としての限定的検討

に留まっていますが、無視できない存在になっているのは間違いないでしょう。

暗号資産ETFや関連商品は、「高成長性」「分散効果」「新たなリスクプレミアム」を提供する資産として、徐々に検討対象に入り始めています。

保険は保障機能だけでなく、資産運用、資産承継を統合する側面もあります。

暗号資産はその中で、価値保存や成長性、分散性という役割を担う新たなピースです。


この記事を書いた人

中島宏明

経営者のゴーストライター
(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
  
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。