世界的に見れば、経済の回復基調はより鮮明となってきています。欧米諸国では物価上昇が続き、世界的に原油やエネルギー価格などの価格高騰が続いています。急速な物価上昇、インフレ状況を受けて、12月16日にはイギリスが利上げを行い2月にももう一段の利上げ(利上げ後は0.5%程度の金利の見通し:注)執筆時点2月1日、以下同じ)が見込まれています。アメリカはテーパリングを開始し22年3月には利上げが行われる見通しです。このような欧米各国と異なり金融緩和が続く日本では引き続き低金利が続くものと予想され、株式市場は不安定ながらも、不動産市場は不安を抱えながらも、もうしばらくは好調が続くものと思われます。
こうした大きな流れの中で、今回の原稿では2022年に行われる注目イベントとそれらが不動産市況にどんな影響を与えるかを検討してみましょう。
(北京オリンピック)
2月4日~20日までの17日間、冬季オリンピックが北京で開催されます。北京では2008年に夏季オリンピックが開催されましたが、それから14年の間をおいて冬季オリンピックの開催となります。ちなみに、18年平昌、22年北京とアジアでの開催が続いていますが、次回はイタリア・ミラノでの開催が決まっています。その次の2030年は札幌が招致に手を挙げているようです。
中国関連で我が国の政治・経済に影響の可能性があるのは、台中関係の悪化懸念です。北京オリンピック後に動きがあるかもしれないと懸念されている、「台湾と中国の関係が一段と悪化し、武力衝突などが起こる」ことです。2014年ソチオリンピック後のロシアによるウクライナ侵攻のようなことがあるかもしれません。万が一こうした武力衝突が起これば、近隣である沖縄は大きな影響を受けることは間違いありません。もちろん、日本をはじめ、米国と関係の深い国々(昔のいい方で言えば西側諸国)は、大きな影響を受けるでしょう。特に我が国においては、両国とも国境を接している国ですので不安が走り、株式市場は大きなダメージになり、このことがトリガーとなり、経済全体が悪化する可能性もあります。
また、北京オリンピック開催に合わせて中国政府は「デジタル人民元」をスタートさせ、北京オリンピックの会場内の支払いは全て「デジタル人民元」で行われるそうです。
(日本の政治イベントと経済)
22年は、日米中で大きな政治イベントがあります。いずれも、現状と大きな変化があった場合には株価は動き、金融政策の変更可能性があります。そうなれば、不動産市場にも影響が出てきます。
日本では、7月に参議院議員選挙が行われます。今の状況(この先どうなるか分かりませんが)では、現政権は参議院選挙を無難に乗り切りそうですので、もしそうなれば以降令和7年(2025年)まで国政選挙はありません。自民党が圧勝すれば、政権の安定感が増し、政策運営がしやすくなり、岸田政権の長期化が見えてきます。安定感のある政治は経済にプラスを与えますので、7月の参議院議員選挙で与党が現状維持かそれ以上となれば、(政治的な側面だけでは判断できませんが)経済・株式市場はより活況になるでしょう。
(中国とアメリカの政治イベントと経済)
また、中国において共産党大会が10月に行われる予定です。5年に1度開催される大会で、ここで習近平氏が共産党総書記に就任されることが見込まれており、そうなれば3期目となり15年を超える長期政権になり、「中国の悲願と言われている」台湾統一に動く可能性が高くなります。そうなれば、繰り返しになりますが、日本の政治(外交戦略)・経済に大きな影響が出そうです。
日本・中国の現政権の安定延長が見込まれているのとは異なり、支持率が低いのがアメリカのバイデン大統領です。
このアメリカの中間選挙は11月8日(現地時間)に行われます。バイデン大統領の民主党は大苦戦が予想されています。アメリカではインフレ基調が鮮明となり、賃金がそれに伴うほどの上昇をしていないことから市民に大きな影響が出ています。バイデン大統領は、インフレを抑える政策を一層強めるでしょう。そうなればアメリカの株式市場はもちろん日本の株式相場も荒れるものと思われます。中間選挙で民主党が苦戦すれば、議会運営が上手くいかず、政権運営の難易度があがるかもしれません。米中対立が顕在化するなかで、共和党勢力が強くなると武力行使の可能性が高くなるかもしれません。この状況は、日本経済にはマイナスです。また、日本株式市場にも大きな影響がでるでしょう。そして、このシナリオは不動産価格下落のトリガーになりかねませんので、注意が必要です。
冒頭に書いたように、22年の我が国の不動産市場は少なくとも前半は概ね良好だと思いますが、1)金利上昇可能性が見られた時 2)上に書いたような政治・外交で大きな動きがあった時には注意が必要です。