海外でのビットコインETFの承認やビットコインの価格上昇など、暗号資産への関心が高まる一方で、それを悪用した詐欺も増加しています。新たなテクノロジーや高リターンの魅力につけ込む手口は巧妙化しており、投資リテラシーの高い投資家でさえ被害に遭うケースが後を絶ちません。本稿では、被害に遭わないために知っておきたい5つの対策をご紹介します。暗号資産投資に関心のある方はもちろん、すでに保有している方も今一度チェックしてみてください。

「プレセール」には投資しない

暗号資産詐欺の温床ともいえるのが、「プレセール(上場前販売)」です。「取引所に上場する前に、安く買える」「価格が10倍、100倍、1000倍になる」と謳い、未上場のコインを販売する手口は典型的な詐欺の一種です。

とくに、キックバック(紹介報酬)が高額に設定されているプロジェクトには要注意です。インフルエンサーや紹介者が「必ず儲かる」などと過剰に推奨している場合、その背後に高額報酬がある可能性が高いと疑ってかかるべきでしょう。

プレセールで本当に価値のあるプロジェクトはごくわずかです。基本的なスタンスとしては、「すべて無視すること」をおすすめします。運良く上場後に価格が大幅に上昇しても、運営陣や超大口保有者が大量に売却すれば、大きく値崩れします。仮に含み益が膨らんだとしても、売り時が一瞬なのがプレセールコインの特徴です。長期的に価値を維持できなければ、それは資産とは言えません。

投資を検討するコインは「X(旧Twitter)」で検索する

新しいプロジェクトや銘柄・コインを知ったとき、「これは良さそうだ」と思ってもすぐに飛びつくのは危険です。まずはX(旧Twitter)で、「コイン名+詐欺」「プロジェクト名+scam」などのキーワードで検索してみましょう。

詐欺の可能性があるプロジェクトは、たいてい誰かが注意喚起をしています。実際に被害に遭った人の投稿、詐欺の手口を紹介するスレッドなどが見つかることが多く、被害を未然に防ぐ手がかりになります。

ただし、「詐欺に注意」と言っておきながら、別のプロジェクトに誘導するコンテンツも存在します。情報を読む際は、「発信者の目的」や「フォロワー数・投稿履歴」などもチェックし、冷静に判断することが大切です。

DMの投資勧誘は無視が正解

暗号資産に限りませんが、投資関連の投稿に「いいね」やコメントをした直後に、知らないアカウントから「今が買い時のコインがあります」「特別なコミュニティに招待します」などというDMが届いたことはありませんか?

これは詐欺の典型的な入り口です。相手は関心を読み取って、心理的に揺さぶりをかけてきます。「今だけ」「あなただけ」「秘密の情報」などの言葉は、詐欺師が好んで使う常套句です。

こうしたDMには一切返信せず、速やかに削除、もしくはブロックすることを徹底してください。

メガインフルエンサーの情報でも信用しない

フォロワーが多い、名前が知られている、専門家を名乗っている──こうしたインフルエンサーの言うことを無条件で信じてしまうのは危険です。実際に、知名度の高い芸能人などが意図的に詐欺コインの宣伝に加担していた事例もあります。

大切なのは、複数の視点から情報を検証することです。SNS、メディア、ホワイトペーパー、開発元の公式サイト、第三者の技術レビューなど、異なる角度から調べることで、より信頼性の高い判断が可能になります。

「みんなが言っているから安心」と思っていたら、実はその「みんな」がグルだった…というケースもあります。判断の軸を他人に預けないことが、最大の防衛策です。

「利回り」よりも「透明性」と「実績」を重視する

暗号資産の投資では、「利回り○%保証」「1ヶ月で資産が○倍」など、通常の投資では信じられないような謳い文句が並ぶことがあります。こうした甘い誘い文句は、詐欺のサインと受け止めていいでしょう。

本当に信頼できるプロジェクトや取引所は、「どのような仕組みで収益を出しているか」「開発者や運営母体が誰か」「過去にどのような実績があるか」といった透明性を大切にしています。

収益構造が不明瞭なまま、「儲かる」という結果だけを強調するプロジェクトには手を出さないようにしましょう。利回りよりも、継続性と信頼性を重視する姿勢が、長期的に資産を守ることにつながります。

暗号資産は、正しく使えば資産の多様化や新たな収益機会をもたらす可能性があります。しかし同時に、詐欺という落とし穴も多数存在します。大切なのは、「疑うこと」を恐れず、「調べること」を惜しまないことです。冷静な視点と確かな情報リテラシーが、資産を守る盾になるからです。

暗号資産の未来を信じるからこそ、まずは「騙されない技術」を身につけるところから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

中島宏明

経営者のゴーストライター
(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
  
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。