ご自身も20代前半からイタリアに海外移住し、長年海外生活を続けている株式会社 La Quartaの小林雅之氏。現在は、富裕層の海外移住支援サービスを展開されています。今、富裕層に人気の海外移住先はどんな国(地域)なのか。移住しても数年で帰国してしまう移住者が多い中、どうすれば海外生活を続けられるのか。本稿では前編に引き続き、海外移住のリアルをお聞きしました。

インタビュイー:株式会社 La Quarta 代表取締役社長・小林雅之氏

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インタビュアー:ゴーストライター 中島宏明

海外移住の理由として多いのは相続対策

――お問い合わせには税金に関する内容も多いと思いますが、どのような問い合わせが多いのでしょうか?

小林雅之氏(以下、小林氏):顧問税理士と十分に話し合った上でお問い合わせをいただくことが多いですね。日本の非居住者になることが海外移住の大きな意味ですが、あえて住民票を日本に残す方もいらっしゃいます。また、国民年金の支払いを継続するかどうかは個人のご判断になります。

日本の居住者/非居住者の判定は、単純に半年(年183日)海外にいれば良いというわけではなく、「生活の基本が日本にある」と認められ、居住者判定となるケースもあります。物件所有なのか、日本に仕事があるからなのか、確たる条件があるわけではありません。そのため、税理士等に相談しながら進めていくことになります。移住先が決まったら、今度は現地の税理士を弊社がご紹介します。日本と現地、双方の税理士と十分に話し合い・打ち合わせをし、想定される懸念点を洗い出し対策を立ててから資金移動を行います。

移住先の国や地域を選ぶ際は、租税条約に該当する国か、日本で発生している所得か(二重課税にならないか)、スイスやオランダでは裕福税と言って毎年年末に総資産に対してかかる税金がありますので、そういった税制面も考慮しながら決めていきます。

また、EU圏ですと現地で銀行口座をつくるハードルもあります。居住権では口座開設国できない国もあり、審査の際に「どこから得たお金か」を確認されたり、15年前の資料を求められるケースもあります。そういった点も、一つひとつ弊社でサポートしています。

海外移住を希望される理由の多くは、やはり相続対策です。相続税、贈与税は税率が日本とは大きな差があります。また、プライベートバンクで口座を開設し、それなりの資産を預けると専属担当がつくことになります。運用面の魅力もありますが、それよりも彼ら彼女らの豊富な人脈を紹介してもらえ、お子様の教育相談などもできることが大きな魅力です。

早期のグローバル教育には海外移住が一番

――小林さんはお子様も早くから海外で教育を受けていらっしゃると思いますが、海外での教育をどう感じていらっしゃいますか?

小林氏:海外の教育は、単に知識を身につけるというものではなく、「ディベート」が重視されていると思います。ディベート力が身につくので、どの国や地域に行ってもやっていけるグローバルな人材に育つのではないでしょうか。

議論のテーマは毎日違っていて、学校の先生から親に「家に帰ったら、お子さんにこれについて聞いてみて」という連絡が入るんです。自分はそのテーマについてこう捉えてこう解釈している。だからこういう考えであるというのをしっかり言葉で伝える。それを日々行うので、自然とさまざまな考え方に触れることになり、多様性や創造性が身につきます。

そんな教育のアプローチについては、お問い合わせをいただく方もよく調べられています。相続のこともありますが、それ以上にお子様の教育を理由に移住をご希望される方が多いですね。「小さいうちから海外で教育させたい」「グローバルな人材に育ってほしい」というニーズです。

ご相談者様ご自身が一時期留学していたので、自分の子どもにも海外での教育を…という方もいらっしゃいます。日本のインターナショナルスクールに通うこととの違いは、「海外移住すれば、すべてが英語の世界」ということです。異なる文化、異なる価値観に日々触れるという蓄積は、やがて大きな変化を生むと思います。

現地校へ行くと、国によっては英語は第二言語になってしまうのですが、多くの方は現地校ではなくインターナショナルスクールかアメリカンスクールをご希望されます。インターナショナルスクールやアメリカンスクールに通うご家庭はほとんどが富裕層ですので、自ずと富裕層ファミリーと交友ができます。今はSNS等で卒業後もつながることができますし、例えばハーバード大はOBOGの横のつながりでビジネスをしているケースが多いですよね。そういった交友関係も、将来的には大きな価値になると思います。国籍や民族、宗教を越えた交友関係からどんどん世界がボーダレスになり、「地球人」として生きる人が増えれば、もっと世界は平和で良くなるのでないでしょうか。海外移住サポートを通じて、そんな世界をつくっていければと思っています。

この記事を書いた人

WMJ編集部

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