皆さんは何を基準に株式を売買していますか?

ファンダメンタルズ、テクニカル、需給、板など人により様々だと思います。人それぞれ根拠はあるものの、「もしかして損するかもしれない」、「このエントリーポイントは間違っているかもしれない」と自信なくエントリーしている人が結構いらっしゃるのではないでしょうか。

評論業・講師業を行っていて来場者の方から頂く質問で一番多いのは「暴落はいつ起こるのでしょうか?」という質問ですが、その次に多いのはエントリー・イグジットのタイミングを質問されることは非常に多いです。エントリーの根拠がしっかりしていないので迷いが生じてしまうのだと思っています。迷いの原因は個別銘柄の分析が甘いこと、深く調べる気もなく勢いで発注している人も見られます。これは「相場観」等と呼ばれている日経平均株価などの全体の指数の方向性が欠如しているからだと思っています。

相場全体の方向性を押さえておくと指数が上昇する過程で「まだ続く」と判断してポジションが取れますのでエントリータイミングの間違いが起こりにくくなります。買ってすぐに全体相場の下落に巻き込まれてしまう人は分析に相場観を入れてみましょう。

今回は指数の方向性をつかむための話をしようと思います。大まかな全体感をつかんで指数の見通しを押さえつつエントリーできると損失の回避や取引の幅が広がると思っています。

私は子供の頃に株式市場に興味を持ち、30年相場を見ており日経平均株価などの指数の方向性を当てるのは「需給」、「業績」この二つに注目して分析することに行きつきました。

「需給」とは日本市場の売買の多数を占める外国人投資家の動向を丁寧に見ていくことで「業績」とは個別の業績を積み上げてその変化を追いかけていくことです。今日はこの見方と根拠をお話ししていきます。

まず、需給から説明しますと、日本市場の外国人投資家の占める割合は29.6%(2019年末)です。これは保有ベースで売買ベースではHFT(アルゴリズム高速取引)のような短期売買も行っているので6割とも7割とも言われています。

投資部門別株式保有比率の推移

(出所)JPX「株式分布状況調査の調査結果について」よりこころトレード研究所作成

外国人投資家以外のメインプレーヤーは「信託銀行」と「個人投資家」です。信託銀行はクジラと呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの年金、かんぽ生命、ゆうちょ銀行が投資主体です。

下図を見ていただくとわかると思いますが、外国人投資家が買い越し、売り越しのトレンドを形成しています。過去の例を見ると4週連続で2000億円以上の買い越し売り越しとなった場合は10週前後まで続く傾向があります。トレンドが続く傾向があるので大きな買い越しが連続して入ってくるのを確認してからエントリーするのも一つの作戦でしょう。

信託銀行はGPIFなどの年金の買いで毎年買い越しを続けていました。これは低金利が続いているため、債券のウエイトを落とし内外株を25%に引き上げる方針にしました。信託銀行は株式のウエイトを引き上げるため2020年まで買い越しが続きました。株式の配分を増やしたのはGPIFだけではなく、国家公務員の年金である国家公務員共済組合連合会や地方公務員の年金である地方公務員共済組合連合会なども株式の買い手となりました。 現在年金は数年続けてきた株式の比率を増やすオペレーションをほぼ完了しています。年金は保有資産を時価で計算しているため、株価の上下で保有割合も上下することが重要なポイントとなります。今年に入ってからの信託銀行の売り越しが続いたのは株価上昇を受けて時価総額が膨らみ高くなった株式のウエイトを減らすオペレーションを行ったためだと考えています。個人投資家は株価に逆張りをする傾向が強く、株価が上昇した際は売りが膨らみ、下落した場合は買いが集まります。足元MRFの残高も積み上がっているので下落時の買いの主体になると考えています。この投資主体の現物株投資動向が一番オーソドックスな需給分析となります。

投資家別売買動向

(出所:JPX「投資部門別売買動向」よりこころトレード研究所作成)

次にここ数年、外国人投資家が日経平均先物を大きく売越しており、相場の上下にこの影響が色濃く出ています。こちらも一方通行になりやすいのでチェックが必要です。現物動向のように毎週アップしてくれるサイトがないのでJPXのサイトから取得して自分で作成しましょう。

外国人投資家の先物売買動向

(出所:JPXよりこころトレード研究所作成)

次に業績について説明します。業績はEPSで把握するのも良いのですが、日経平均株価であれば225銘柄なので自分で最終利益を積み上げて監視すると銘柄やセクターまで細かく把握できます。積み上げた最終利益の増減は株価の動きと相関性が高く、利益が増えると株価は上昇し、減ると株価は下落します。株価は1~2年先の業績を織り込んで推移していますが、投資家は四半期決算の結果をもとに業績予想を修正します。日経平均などの指数の変動率が高くなるのもこのためです。

個別株は決算を受けて株価が上昇することもありますが、日経平均株価のような指数は構成銘柄の業績の集計を勘案します。決算発表時にリアルタイムで業績を集計すると現状の把握もできますし、予想より上振れている銘柄が多ければ相場は上昇することが多いです。上方・下方修正の社数を集計したリビジョンインデックスというものもありますが、どちらの修正者数が多いかを把握することで雰囲気を感じることができます。これより業績の上方修正、下方修正を集計した実額を知っておくとセクター選びも容易になりますし、なにより自信をもって購入するタイミングとなるのです。

日経平均採用銘柄の最終益(期初)

(出所:各社会社予想等からこころトレード研究所作成)

このように需給と業績を考えて自分なりの方向性を押さえておくと個別株投資のタイミングに濃淡をつけれるため成績の向上に寄与すると思います。手間がかかりますが、銘柄選びの前段の作業として好調なセクターを把握できるため、取り組んでいただけたら一歩進んだ投資家になれると思います。

この記事を書いた人

坂本 慎太郎(Bコミ)

2002年から証券会社のディーラーとして株式と先物の売買を経験。2008年から株式会社かんぽ生命保険に転じ、社債・地方債・財投機関債のファンド・マネージャーを経験した後、運用計画の策定・株式のストラテジスト、株式のファンド・マネージャーとして運用に携わる。
その後は個人投資家育成のため、こころトレード研究所を運営。ディーラーとして短期、機関投資家として中長期とあらゆる取引スパンを経験し、売買の裏側まで網羅していることが強み。