今月のコンテンツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1)6月のJREIT市況の振り返り
2)7月のJREIT市場の見通し 
3)7月の決算銘柄について(今回は3銘柄紹介)

注:執筆は6月30日後場終了時点です。

22年6月のJREIT市場の振り返り

22年6月1日~30日のJREIT市況の振り返りをお伝えします。

東証JREIT指数(総合)(終値ベース)は、6月1日(水)2007.99ポイントからスタート、6月15日には1880.93ポイントまで落ち込みましたが、その後は、多少回復して30日終了時点では1966.90ポイント台で引け、2000ポイントを割り込んで末日を迎えました。底で1日終値比マイナス6.3%、末日では同マイナス2%と、概ね下げ基調の1カ月でした。円安傾向が加速し、またそれがしばらく続きそうなことが濃厚になっており、JREITは弱含みとなっています。

全JREIT分配金利回りの平均は、前月は3.6%台での推移から、3.7%台の推移と価格が下がった分利回りは良くなりました。

7月のJREIT市場の見通し

後述するように、今月は決算銘柄が多くあります。そのため、これら銘柄への「分配金」=配当狙いの資金流入が増え、JREIT相場全体を押し上げるでしょう。7月末の権利付き最終日は7月27日(水)、権利落ち日は7月28日(木)ですので28日には、下がる銘柄が目立つ様になるでしょう。

平均して3.5%~4.5%程度の配当金利回りがありますので、投資口価格上昇がそれほど見られないようなJREIT銘柄に配当(分配金)狙いで投資をするのもいいと思います。

7月の決算銘柄

7月(7月・1月決算期)に決算を迎える銘柄は16本あります。JREITは現在全部で61銘柄ありますが、1月―7月決算の銘柄が最も多くなっています。いつもは2銘柄紹介するこのコーナーですが、銘柄が多いため今月は3銘柄ご紹介します。

・森ヒルズリート投資法人(3234)は、港区に点在する森ビルが開発したオフィスビルが大半をしめるJREITです。旗艦物件は六本木ヒルズでポートフォリオの約3割を占めています。

森ビルとREITの間での長期固定マスターリース契約が結ばれているので、「安定感がある」という側面と、「賃料上昇時にはその恩恵を受けない」という側面があります。

新型コロナウイルスの影響を大きく受けたオフィス系REITですが、分配金は安定しているとはいえ、投資口価格については、この先のオフィスのあり方が戻るのか?にかかっていると言えます。

・イオンリート投資法人(3292)は、ポートフォリオに含まれる全47物件の大半が国内のイオンモールやイオンショッピングセンターと関連する物流施設です。また、マレーシアのイオンモールも2物件ポートフォリオに組み込まれています。NAV倍率は1倍ちょうど前後で推移、分配金利回りは4.3%前後で比較的高めです。

主に地方に点在する大型商業施設(イオンモール)で閉店や売却など物件の入れ替えはそれほどなく、そのため集客状況、テナント付きの状況等のゆくえが運用状況に影響を与えることになります。この先のショッピングモールの成長には疑問符をつける専門家もいますが、現状は良い状況が続いているようです。分配金利回りが比較的高い水準で安定しているので、分配金狙いの投資家には人気のある銘柄です。

・産業ファンド投資法人(3249)は、産業用不動産に特化したJREITで国内唯一、世界でも珍しいポートフォリオになっています。プライベートエクイティへの投資ファンドとして有名なKKRが22年春からメインスポンサーとなりました。

2007年に上場した比較的古参の銘柄で、物流施設や工場、航空関連施設(JALの格納庫・整備施設)、研究施設などがポートフォリオに組み込まれています。NAV倍率は高く(6月末時点で最も高い)1.36倍、分配金利回りは3.5%前後で推移しています。

この記事を書いた人

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人住宅・不動産総合研究所 理事長 
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

【著書】
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

【レギュラー出演】
ラジオNIKKEI「吉崎誠二のウォームアップ840」
ラジオNIKKEI「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演